フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
39-5・特集2.大学祭報告
2006年12月22日発行読書運動通信39号掲載記事7件中5件目
特集:1.恋愛 2.大学祭報告
紹介:宮沢賢治の本〜第7回
お知らせ:イベント
今年の大学祭は11月4日(土)、5日(日)に開催されました。
読書運動プロジェクトでは毎年恒例となった図書館ウォークラリーと
講演会を開催、さらには文学部教授の谷知子先生率いる読み聞かせの会
「おはなし音楽会」も加わり、大変賑やかな2日間となりました。

・講演会

 1日目は昨年度と同様に、キダーホールで講演会を開きました。
講師はますむらひろし先生です。ますむら先生は1973年に
『霧にむせぶ夜』で第五回手塚賞に準入選、デビューされました。
代表作は『宮沢賢治童話集』『ますむらひろしのファンタジーゾーン』
『アタゴオル』シリーズ『ヨネザアド』シリーズ『宮沢賢治童話集』など多数あり、
現在も精力的に活動されています。先生の漫画の1番の特徴は登場人物の姿です。
『宮沢賢治童話集』はじめ、『アタゴオル』シリーズ『ヨネザアド』シリーズなど、
登場人物のほとんどが猫の姿をしているのです。1985年には、
ますむら先生のキャラクターデザインによる『銀河鉄道の夜』が
アニメーション映画にもなり、観客動員数100万人超過の記録を打ち立てています。
このように長年にわたり宮沢賢治の小説を漫画化してこられた功績により、
先生は、2001年、宮沢賢治学会よりイーハトーブ賞を授与されています。
講演会当日は書画カメラを使用し、ご自身の作品を映写しながら
講演をしていただきました。先生は気さくな雰囲気の方で、
訥々とした語り口から、素朴で優しいお人柄がうかがわれました。
幅広い年齢層の方が聴講に来られましたが、皆、宮沢賢治と
ますむらひろしの世界に引き込まれていました。
色々なお話の中で特に心に残っているのは、以前『銀河鉄道の夜』を
漫画化したときのエピソードです。そこに描いた「三角標」は、
その後たくさんの資料を検討した結果、違っているとわかった、
けれども描き直すのは大変だから、できればやりたくない、という言葉でした。
長年、賢治の世界を絵に描き起されている先生ならではの
貴重なお話だなと感じました。人が小説を読んだときにイメージする風景は
千差万別でしょう。難解と言われる賢治作品を、正確に、
しかも万人が納得するような形で漫画されているますむら先生のお言葉は、
その1言1言に宮沢賢治への敬意や共感、漫画家として仕事への
プライドがこもっているように感じられました。
質疑応答の時間が短かったのは残念ではありますが、
私たち読書運動プロジェクトメンバーも、観客の1人として
楽しくお話を聞かせていただくことができました。
講演終了後、会場を図書館に移し、サイン会が行われました。
これは全く先生のご好意によるもので、長蛇の列となってしまったファンの
1人1人に、丁寧に絵入りのサインをしてくださいました。
大勢の来場者があったにもかかわらず、大過なく終了でき、
和やかないい雰囲気の講演会になったと思います。

・ウォークラリー

 図書館ウォークラリーは、学生ばかりでなく一般の方にも
図書館を隅々まで見ていただこうという意図で毎年開催しています。
2階のロビーで受付をし、3階と4階に3問ずつ貼られたクイズを解き、
ルーフテラスに設置されたゴールまで行くと景品がもらえ、
さらにくじを引いて当りが出ると読書運動プロジェクトの年間課題図書が
1冊プレゼントされます。
今年の課題図書は年齢に関係なく読める『銀河鉄道の夜』でした。
 ゴールのルーフテラスは、緑化のための花壇とウッドデッキが
設けられた大変気持ちのいい空間ですが、学生でも上ったことがない
人がいるような穴場です。参加者の中には、ゴールに着いた嬉しさと
風の気持ちよさに、思わず歓声を上げている人もいました。
 クイズは、今年度のテーマである宮沢賢治に因んだもので、
館内各所に掲示した、活動報告などの展示内容をよく読むと
解けるものになっています。昨年度までは、大人用、子供用と
問題を2種類ずつ作っていましたが、今年は難易度を調整度し、
大人が楽しめて子どもでも解けるように、展示の傍にヒントを
つけることにしました。子どもたちが館内を駆け回って
問題やヒントのありかを探し出し、付き添いの大人が内容を読んで
解答を見つけるというような、大人と子どもが協力して
取り組めるようなウォークラリーになったことは、
とてもよかったと思います。また、去年まではクイズの景品に
大学のロゴの入ったグッズを購入していましたが、
今年は読書運動プロジェクトオリジナルの栞やメモ帳を作成し、
それを景品にしました。この景品は、事前の準備作業が必要ではありましたが、
大変な思いをした甲斐あって、好評の声を多く聞くことが出来ました。
今年は問題を1種類にしたため、2度トライする人が減り、
数字の上では参加者減となりましたが、
概ね順調に終えることが出来たと感じています。 
(日本文学科3年 佐々木かおる)

・おはなし音楽会

 文学部教授の谷先生から大学祭で読み聞かせの会を開きたいと
打診があったのは秋口でした。早速内容に関する打ち合わせを行い、
大学祭2日目の午後に、「おはなし音楽会」のタイトルで
開催することになりました。谷先生のご友人で、名瀬小学校保護者会
「おはなしスキップ」で読み聞かせをしていらっしゃる橋部千枝さん、
同じくピアノ演奏を担当していらっしゃる宮崎由美江さんにご協力いただき、
学内からは、谷先生のゼミ生と有志が読み聞かせを、音楽学部院生が歌、
学生がバイオリンを担当し、留学生有志には母国語での
読み聞かせをお願いするなど、学生、教職員、外部参加者が渾然一体となって、
大学祭を訪れる子供たちに楽しんでもらう企画を立てました。
取り上げる作品は、誰もが知っている『ぐりとぐら』です。
オープニングは音楽学部院生の石井環世さんが歌う
『千と千尋の神隠し』のテーマ曲『いつも何度でも』、
続いて大型紙芝居を使った『ぐりとぐら』の読み聞かせです。
それから、韓国、インドネシア、スロバキアからの留学生に、
母国語で『ぐりとぐら』の一説を読んでもらいました。
その後は参加者全員で宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を群読、
石井さんによる宮沢賢治作詞作曲の歌『星めぐりの歌』、
音楽学部学生の鈴木絢さんのバイオリン演奏『タイスの瞑想曲』
『私を泣かせてください』『チャルダッシュ』と続きました。
会場の図書館2階エントランスホールは、275名の観客でごったがえし、
運動プロジェクトはじまって以来の大盛況となりました。
今年の大学祭はイベントも一つ増え、読書運動プロジェクトメンバー
以外の方の参加もあり、大変中身の濃い2日間になりました。
ご協力くださった皆さん、ご来場の方々に、心より御礼申し上げます
     (図書館事務室)

ウォークラリーにきてくれた小学生の皆さん

ますむら先生講演会の様子

お話音楽会

ますむら先生講演会ポスター
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