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松田4
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私は「ちくま文庫」、「ちくま学芸文庫」を作ってきましたし、「ちくまプリマー新書」も作りました。 そのとき、それまであった四六版の叢書、選書類をやめて文庫や新書にしました。 そして結果的には比較的安定した売上と利益をあげられる構造になりました。 ところが、新潮社では、今年の東京国際ブックフェアでは、 「新潮選書」という四六判の選書に焦点を絞っていました。 なぜ新潮社が、過去のメディアになってしまった四六版並製の叢書、選書類に、 いまさら力を入れようとするのか、最初は不思議に思いましたが、 よく考えるとなるほどと思うことがあります。 教養系新書の代表格であるかつての「岩波新書」というのは、骨格のしっかりした、 内容も濃い入門書でした。 それにくらべて、今の新書は、内容が薄いとまでは言いませんが、もっと手軽な、 けれども、雑誌やテレビ、新聞、インターネットなどでは扱いきれないテーマを取り上げています。 こうして教養系新書は多様なコンテンツが刊行されることになったのですが、 さっき言いましたように、かつての教養系新書とは様変わりしてきていることも確かです。 今の新書を見ていると、かつての入門書とくらべると、入門の入門くらいになっているような気がします。 したがって、より本格的な入門書が必要になっているとも思いますし、 今の新書の後に読む本というのが、いきなり専門書になっているとも言えそうです。 その間をうめるものとして、四六版並製の叢書、選書が求められているのかもしれません。 四六版の叢書、選書類は、新潮社から「新潮選書」が、講談社は「講談社選書メチエ」を、 NHK出版も「NHKブックス」として出していて、それぞれがんばっています。 このように、雑誌凋落によって、教養書の戦略、読書者の嗜好ともに変わってきたのは おもしろいことだと思いますね。
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