フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2007読書シンポジウム報告-17
松田6
一番最初にも言いましたが、僕は『王様のブランチ』という番組でかれこれ12年も本の紹介をしてきました。
この番組は、若い女性向けなので、若い女性はどんな本に興味を持つだろうかと思いながら紹介しています。
番組をやっていて嬉しい思いをしたことは何度もありますが、
その一つをちょっとお話ししようと思います。
司会の優香さんというタレントさんのことなんですが、彼女はそんなに本を読まないだろうと思ってたら、
どうも、僕が紹介した本の書名をメモしたり、スタッフに本を借りて読んでいたりするらしいという話を
小耳にはさんだんですね。
それで、ならば色々読んでもらおうと思って、江國香織とか、川上弘美とか、重松清とかを読んでもらいました。
  番組の中で、その本について一言コメントしてもらうんですが、レポーターの大学生なんかは、
それなりにまとめてくるんですが、決り文句が多くて使えない場合も多いんです。
ところが、優香さんは、的確なコメントを自分の言葉で語ってくれます。
このあいだも、松浦寿輝さんの『川の光』という作品を読んでもらったのですが、
「命がつながっているような感じがして、とてもよかった」という、
すばらしいコメントをつけてくれました。
そこで、彼女に、「昔から本を読んでいるの」と聞いてみたところ、
「芸能界に入るまで、本なんて読まなかった」そうなのです。
「なんで読むようになったの」と重ねて聞くと、
「バラエティ番組に出演すると、しゃべることが多い。
きちんと自分の意見を言う人は、どうやら本を読んでるらしいと気がついた」と言っていました。
スタイリストさんやメイクアップアーティストさんは、待ち時間が長い仕事なので、読書家が多いんです。
彼女は、その人たちや番組スタッフに勧められたり、
『王様のブランチ』の「本のコーナー」で僕が紹介したものの中から、
面白そうだと思ったものは読んでみたり、そんなふうにして、誰に強制されたわけでもなく、
自発的に色々な本を読むようになっていったわけですね。
彼女は『王様のブランチ』に出演するようになって、まだ数年ですが、
今ではもう相当深い読み手になっています。
つい最近も、桜庭一樹さんの『私の男』という迫力のある作品を読んでもらったんですが、
なかなかいいコメントを言ってくれました。
それから、俳優の渡辺謙さんの娘の杏さん、この人は21歳のモデルさんです。
彼女と『朝日新聞』の「be Extra Books 」で対談したときのことです。
この記事は、来週の12月13日の朝日新聞に3ページにわたって載りますので
興味のある方は読んでみてください。
彼女は驚くほど本を読んでいました。それも、若い女性らしい本も読んでいるけれども、
横山秀夫とか、垣根涼介とか、ミステリーやハードボイルドが好きだったり、
時代小説が好きで上江佐真理が好きで、友達にも勧めていると言っていました。
また、村上春樹は、デビュー作から順番に読んでいて、ちょうど今、4作目にきているるそうです。
東海林さだおの『丸かじり』シリーズを読んでいるとか、
宮部みゆきなら時代ものよりミステリーがいい、けれどもファンタジーも捨てがたいなどと、
色々語ってくれました。
聞いてみたところ、モデルの仕事で海外に行くと、海外在住の日本人には読書家が多く、
色々勧められるというんですね。
また、モデルの仕事は待ち時間も多いから、読書は格好の時間つぶしになると。
そんなふうにして1冊読むと、次々と読みたくなってしまい、結果的に本が大好きになったということでした。
そうやって自分の読書スタイルを作っている若い人がいることは、とても嬉しいことです。
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