フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2007読書シンポジウム報告-29
質問
来場者
栃木県教育委員会生涯学習課のMです。
以前私は栃木県立図書館に勤務しておりましたので、津野先生のお話しをうきうきしながら聞いていました。 
私は今、生涯学習課で高校生まを対象とした、子供の読書推進のための活動を担当しています。
高校生を受け入れて教育する大学の先生のお二人にお聞きします。
自治体は平成15年ころから子供の読書運動に力を入れだしましたが、こういった計画について、
何か思われることがありますか?
 また、こういう計画ができたた前と後では、学生に何か変化が、たとえば、
読書力がアップしてきているとか、知的好奇心が高い学生が増えたとか、
そう言うふうに感じられたことはあったでしょうか?
 松田先生にも、子供の読書について、出版にかかわられる方としてのご意見をお聞きしたいです。

津野
数年前、学生達に本を読んでいるか聞いてみましたが、年に1冊も読まないという
学生はさすがにいませんでしたね。
でも、月に4〜5冊読むという学生もまれです。
じゃあ、君たちは本なんかなくなってもいいと思ってるの、と聞くと、
ほとんどの学生がそれは困ると言う。
彼らは、三つの理由を挙げていましたね。
一つ目は、受身でいるだけで情報が入ってくるものは、便利だがつまらない。
自分で考えながら前に進めるのは本だけだ。
二つ目は、メールにでもなんでも、伝えたいことを相手に伝えるためには、
言葉の使い方を覚えなければならない。それには本を読むのが一番いい。
三つ目は、テレビなどで見たものについて、内容を深く知ろうと思うと、やっぱり本だと。
だから絶対に本がなければ困ると言うのですよ。
それだけわかっているのに、なぜか本を読もうとしない。
毎年秋に毎日新聞の読書調査が発表されます。
そのデータを見ると、10代20代の人はわりと本を読んでいるんです。
もっとも読んでいないのが、50〜70代。
出版界が団塊の世代に希望をかけようとしても無理だということが、よくわかる。
それよりも、本を読む必要があると思っているのに、なぜか読書習慣を身に付けることができずにきた
10代20代の人たちに希望をかけた方がよっぽどいい。

松田
ちょっと資料を持ってくるのを忘れてしまったのですが、博報堂生活総合研究所が、
1997年と2007年に10歳〜15歳の子供たちの意識調査を行いまして、その結果がこの10月に出ました。
ちょっとうろ覚えなんですが、読書に対する意識調査で、読書に対する関心を聞いたところ、
で、97年は22%だったのが、07年には37%と15%も上がっていたんですね。
それから、何かを知りたいときにどうするかという問に対し、自分で調べるという回答が、
10年前より10%くらい上がっていました。
また、これから時間があればやりたいことについては、一つはスポーツ、もう一つは読書でした。
朝の読書運動とか、学校の中で読書を強制するのは嫌だなと思っていたのですが、
内容をよく聞いてみると、それが評価対象になるわけでもなく、読む本も強制はしない、
図鑑でも、野球の選手名鑑でもなんでもいいそうで、いい意味でゆるくやっているとのことでした。
それならば、この運動はいいことじゃないかなと思いました。
しかもこういうデータを見ると、効果がでているようですし。
ゆとり教育にはさまざまな問題があるのかもしれません。
が、総合学習というものが、子供が自分で問題を発見してそれを調べてということにつながってるのならば、
この10年間にやってきた教育にも、それなりに意味があるかもしれないと思います。
おもしろいデータだなと思ったので、僕の意見というより、ちょっとそれを紹介してみました。

三田村
本学では、この読書運動を周知するために、学内に大きなポスターを貼っています。
本学の受験生を面接しますと、読書が好きだからこの大学を選んだと言う人が、年々増えているのです。
このフェリス女学院が、本好きな人が生き延びやすい大学だと受験生に認識されていて、
本を読みたからこの大学選んだと言ってくれるのは大変嬉しいことです。
実際そういう人が入学後に読書運動プロジェクトの学生メンバーになったりするのですね。
何か声を上げ動き出してみるということは、やはり無駄ではないのだと思います。
朝の読書運動、私も共鳴して、大学でやってみたことがありますが、大変効果的でした。
しかし、中学高校とやってきて大学でもまた同じ方法というのが味気なくて、
どうにか大学らしい取り組みができないか。本を読むだけでなく、それを伝える。
さらに情報を発信するサイクルを生み出せないかと試みを続けています。
効果は今ひとつですが、嬉しいこともあります。
そろそろ終わりにしたいと思います。皆様、長時間ありがとうございました。
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