フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
25-2・特集 座談会「ファンタジーとの出会いと魅力」-3
2005年4月1日発行読書運動通信25号掲載記事4件中2件目
*この記事は7まであります
特集:座談会「ファンタジーとの出会いと魅力」
おしらせ:1.2005年度のテーマ/2.ファンタジー関連おすすめの本
佐藤:
そういえば先生、ハヤカワの『砂の惑星』(フランク・ハーバート著)とか、
トーラが出てくるの、目の赤い、あの、ええと、あれ〜。

伊藤:
目の赤い、コルムですか?

佐藤:
ええと、あの髪が白いの、トーラと、男の人が出てこないや、
スペースオペラです。

伊藤:
スペースオペラですか。コナン(『英雄コナン(シリーズ)』
(ロバート・E・ハワード著,絶版)ですか。

佐藤:
コナンじゃなくって。コナンもありましたね。

伊藤:
スペースオペラ…。えっと…。わかった!ダ、ダ…。

伊藤&佐藤:
ペリー・ローダンシリーズ!読んでました。

佐藤:
もうアレなんか本当に夢中になりますね。

伊藤:
ええ、本当に。当時ファンタジーがなかった時代はむしろ
スペースオペラとして良く描かれていましたね。

佐藤:
今もペリー・ローダンシリーズ(「宇宙英雄ペリー・ローダンシリーズ」
初代草案作家 K・H・シェールほか、2005年現在29名の著者による連作,
ハヤカワSF文庫)はまだ続いてますよね。

伊藤:
そうですねぇ、『レンズマン(シリーズ)』
(E.E.スミス著,創元SF文庫)なんか…。

佐藤:
ああ…それは話が離れますからやめましょう(笑)

三浦:
作者は誰だったか忘れたんですけど、こんな分厚い『童話物語』
(向山貴彦 著/宮山香里 絵,幻冬社文庫)っていう小説って言うか
ファンタジーがあるんですが。それが最近のかはわからないんですけど…。
それには妖精とかが出てきたりして、でもわがままで、最初、
主人公の女の子すら、すごくいやな子なんです。
でも後から読んでいくうちにはまっていって、妖精の世界にも何かがある。
小さなときは妖精ってみんな良い子なのかな、と思って、
妖精の世界にも何かがあるっていうのが解らなくて、
それで高校に入ってそれを読んで、ああ、いろんな世界があるんだなと感じる。
やっぱり歳が上がっていくにつれてわかっていくものが違うというか、
感じることが異なってくるんだなというのが解りました。
高校の図書館には児童文学がおいてあったんですが、すごく昔ので、
たつみや章さんの『ぼくの稲荷山戦記』(講談社)や
「神様三部作(『ぼくの〜』『夜の神話』『水の伝説』)」がありました。
その中に古墳の話とか、水神の話とかがあって、『稲荷山戦記』は
稲荷山古墳をモチーフにした小説で、『夜の神話』は原発問題と
人間に不満を持っているツクヨミ様と、お父さんが原発で働いている
主人公の男の子との話です。
『水の伝説』っていうのは少年と水神の話です。
日本神話って小さい子が読めるような本も出てるじゃないですか。
スサノオがアマテラスに悪いことした、とか。
そういう下地があるから、高校に入って児童文学に取り込まれたものを
読んでみると、ああ、なんか小さいときに感じたのとは違うなあ、と。
たとえば子供のころには、スサノオは最初は悪い奴だけど、
後からいい奴になった、という程度の理解だったものが、
それだけじゃなくてもっと他に深いものがあると解った、というような。
それで大学に入って森先生の授業を取ってみたら
「スサノオは自然を象徴していたんだ」と教わりまして。
それを踏まえて、もう一回小説を読んでみたら、全部自然と関わっていて、
人間が自然を大切にしないから自然イコール神、人間を凌駕した神っていうのが、
人間が自然を大事にしない分反動がきて、現代ならば環境問題を子どもながら
考えさせるという趣向だったのが解かった。大学に入ってもう一回読み返した上で、
しかも森先生の授業を聞いたからそういう風に感じるんだと思うんですけど。
 歳を経て、小さいころに読んだ本とか、何も解らずに読んだ本を
もう一回読み返してみると、知識がついた分素直に読めないっていう
部分もあるんですけど。まあ逆にいえばいろんなことを感じることが出来るし、
いろんな角度から見られるし、切り口が変わってくるっていうか、
作者の意図に近づけるという…。そこまでできてるかはわからないですけど、
何かしら作者に近づいていけるという感じがある。自分の中で
その本の奥にあるものを吸収できるんじゃないかと、
先生方のお話を聞いて思いました。

鈴木:
確かに、年齢を追っていくにつれて、自分が知っている世界も変わってくるから、
それにつれて感じる内容が変わって来るというのがあると思うんですけど、
私の場合、如実に感じたのは、文章理解なんです。小2のときに、
手初めにトールキンの『ホビットの冒険』(岩波少年文庫ほか)を読みましたが、
まず漢字が読めない、ひらがなも危ういところで…。
でも読めるふりをしたり、親に読んでもらって音で理解したり、
読み方を理解したり。分からない漢字があっても前後の文から内容を
察してみたりして、手探りで読んでいたわけです。それを高学年になってから
読み返してみると読める漢字とか理解できる文章が増えていたり、
内容の理解が毎回違ってくるんです。で、伊藤先生の授業を受けると、
トールキンの物語についても、「ああ、こうだったんだ!」というのが
いっぱい出てきて。また読み直しています。

伊藤:
それは光栄ですね。

三田村:生まれ変わる感じがするよね、読み直すたびに。
長いから、長い旅をしているような。

伊藤:
おそらく素晴らしい作品であれば、何回読んでも新鮮さもあり、
新たな発見もあると思うんですけどね。
そういう意味では、良質のファンタジーを読んでいただきたいんですが…。
ここにいらっしゃっている方は『ハリー・ポッター』は
あまり読まれてないようなんですけど。

一同:
読んでますよ。一応

伊藤:
あれはどうなんでしょうね、僕は実を言うとあれをファンタジーとは認めてなくて、
あれは児童文学ではあると思うんですけど、やっぱり僕の中でファンタジーというのは、
おそらくハヤカワSF(文庫)や創元推理が扱っているレベルを
ファンタジー作品だと思っているんです。でも最初申し上げましたとおり、
僕は児童文学をやろうと思っていましたから、そういう点では『ハリー・ポッター』は
秀逸な作品だとは思っているんですけど。
どうも世の中で言っているファンタジーの作品と、私が考えているファンタジーは
ずれがあるのかなと思っていて。そういうのは若い方々はどういう風に
思っているのか伺えたらうれしいですけど。
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