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2006年度第3回読書会『セロ弾きのゴーシュ／オツベルと象』を読む |
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2006年6月13日（火）12:20〜13:00
2006年6月20日（火）12:20〜13:00
場所：附属図書館緑園本館4階読書運動プロジェクトミーティングルーム
ナビゲーター：佐藤裕子先生
*レジュメは佐藤裕子先生による。
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第1週・『セロ弾きのゴーシュ』を読む
レジュメ作成 文学部教授 佐藤裕子先生
A．作品の前提
ベートーベンの『交響曲第6番ヘ長調・田園』が作品の背景に存在する。
B．『交響曲第6番ヘ長調・田園』
第１楽章：田園に到達した時の朗らかな感情の目覚め
第２楽章：小川のほとりの情景
第３楽章：農民の楽しい集い
第４楽章：雷雨・雨
第５楽章：牧人の歌、嵐の後の喜ばしい感謝の感情
C．ゴーシュの演奏の欠点
�．謄鵐櫃�遅れる
→「セロが遅れた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ」
��音程がずれる
→「セロっ。糸が合わない。困るなあ。ぼくはきみに
ドレミファを教えてまでいるひまはないんだがなあ」
�４蕎霽集修坊腓韻�
→「おいゴーシュ君。君には困るんだがなあ。
表情というものがまるでできてない。怒るも喜ぶも
感情というものがさっぱり出ないんだ。
それでどうしてもぴたっと外の楽器と合わないもなあ。
いつでもきみだけとけた靴のひもを引きずって
みんなのあとをついてあるくようなんだ、こまるよ、
しっかりしてくれないとねえ」
D．四匹の動物の果たす役割
�‖腓�な三毛猫―ゴーシュの怒りの感情を引き出す。
�△�っこう―音程を矯正する。
�Ｃ�の子―テンポを矯正する。
�ぬ遒佑困澆凌道辧讐山擇�醸し出す効果についてゴーシュに伝える。
E．ゴーシュの感情の解放・演奏することの歓び
第2週・『オツベルと象』を読む
A．作品の構成
→アンデルセン『絵のない絵本』の影響。
B．「……ある牛飼がものがたる」という副題の意味するもの
→語り手の牛飼／作品内部に潜在的な聞き手が存在すること。語り手のスタンス。
C．マルクス『資本論』の影響
�．泪襯�スは、社会構造を上・下という建築構造の用語で説明する。
下部構造：物質的、経済的、社会的状況。自然的生産条件（気候や自然）・
生産手段（道具や機械）・生産関係（労働の分配、財産の所有など）
上部構造：社会の考え方、政治制度、法律、宗教、道徳、芸術、哲学、科学等。
�⊆匆颪寮源妻�式が政治や思想の状況を決定するということは、
現代の我々は封建時代の人々とは異 なった考え方や道徳観を
持っているのは当然である。マルクスによれば、道徳や習慣は
社会の下部構造の産物であり、何が正しくて何が間違っているかを
決めるのは社会の支配階級であるとしている。
だからこそ、これまでの全ての歴史は階級闘争の歴史であり、
歴史とは、生産手段は誰のものかをめぐる争いでもある。
��マルクスによれば、どの時代にも二つの大きな社会階級が
せめぎあっているという。古代の奴隷社会では自由市民と奴隷が、
中世の封建社会では封建領主と奴隷が、マルクスの時代、
即ちブルジョワ社会、あるいは資本主義社会の時代には、
資本家と労働者、あるいはプロレタリアが対立している。
つまり、生産手段を持っている者と、持っていない者の対立である。
�ぅ泪襯�スによれば、「労働」は「人間であること」と
密接に結びついていると考え、肯定的に捉えて いる。
�セ駛楴腟舛離轡好謄爐任蕨�働者は誰か他の人の利益の為に働く。
働けば働くほど、その他人が得をするシステムとなっている。
すると労働は労働者自身から抜け出して、労働者のものではなくなってしまう。
労働者は自らの労働から隔てられてしまうのだ。
さらには、感情の面でも自分自身から隔てられてしまって、
労働者は人間であることのプライドを失う。
これをマルクスは「疎外」と名付けた。資本主義社会は、労働者が事実上、
他の社会階級の奴隷となるように組織されており、労働者はブルジョワに
労働力を差し出すだけでなく、人間としての存在を明け渡してしまうのだ。
��資本家はもともと労働者が作り出した価値を横取りしてしまう。
これを「搾取」と呼ぶ。
＊宮沢賢治は「疎外」と「搾取」の現実をファンタジーとして描いた。
◇第3回読書会『セロ弾きのゴーシュ』・『オツベルと象』を読むに参加して◇
第3回読書会は『セロ弾きのゴーシュ』と『オツベルと象』の2本立てで行われた。
ナビゲーターの佐藤裕子先生がレジュメを作ってきてくださり、
今までの感想の出し合いから始まる読書会とは違った形のものとなった。
＜第1週・『セロ弾きのゴーシュ』＞
『セロ弾きのゴーシュ』は、ベートーベンの『交響曲第6番・田園』を
聞きながらおこなわれた。音楽を聴きながらの読書会はとても新鮮で、
曲にカッコウの鳴き声が入るたびに会話を止めて耳を澄ますのが、
なんだか面白かった。今回、なぜ音楽を聞きながらしたかというと、
作品の主人公、ゴーシュが所属する金星音楽団が、町の音楽会で演奏
しているのが『田園』であり、この曲が作品に大きな影響を与えているからである。
『セロ弾きのゴーシュ』は宮沢賢治の作品の中で私が一番好きな作品だが、
楽団が演奏しているのがこの曲だったということを、今回初めて知った。
ゴーシュは夜な夜な猫、カッコウ、タヌキ、ネズミといった
様々な動物たちの訪問を受ける。最初にやってきた猫のときには
ひどい対応をしていた彼だったが、タヌキの訪問を受けたころから
少しずつ素直になっていく。演奏会の日、ゴーシュは思ってもみなかった
大成功をおさめるが、それは、動物たちとの触れ合いによって、
いつのまにかチェロの腕が上達していたからであった。
＜第2週・『オツベルと象』＞
私は今まで『オツベルと象』を読んだことがなく、読書会の前に慌てて読んだ。
この作品はゴーシュとはかなり趣が違う。タイトルになってはいるが、
オツベルは主人公ではない。『セロ弾きのゴーシュ』はゴーシュの成長の物語だが、
『オツベルと象』は、労働の話だ。この物語りの主人公はオツベルにだまされて
働かされる象である。象は初めは喜んで労働に励んでいたが、
主人であるオツベルの汚いやり口のせいで、だんだん勤労意欲がなくなり、
すっかり元気もなくなって、仲間たちのいる森に帰りたいと思うようになる。
賢治はこの作品を通して「労働」と「搾取」の問題を書いたのだと、
佐藤先生はおっしゃったが、平易な言葉で書かれた童話にそんなに
深い意味があったのかと驚いた。
読書会に出なければ、『セロ弾きのゴーシュ』は、動物がかわいいとか、
最後にゴーシュが成功してよかったな、と思うだけで終わっていたかもしれないし、
『オツベルと象』は、なんだか悲しい話だな、と思っただけだったかもしれない。
けれども、この読書会で、私はゴーシュや象の気持ちの変化や、
作品にこめられた深い意味までわかった。
読書会は他の人の意見を聞いたり、知らなかった知識などを知ることが
できるから楽しい。自分1人で読んでいるだけではなかなか気付けないことに
気付いたり、読んだことのなかった本を手に取る、いいチャンスも得られる。
自分の興味の範囲を広げる手がかりにもなるので、是非、一度参加してみて欲しい。
日本文学科1年萩原やよい
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