フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2006年度第2回読書会『銀河鉄道の夜』を読む.2
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2006年5月16日(火)12:20〜13:00
2006年5月23日(火)12:20〜13:00
場所:附属図書館緑園本館読書運動プロジェクトミーティングルーム
ナビゲーター:安藤公美先生
*この記事は録音を元に書き起こしたものです。
筆耕:日本文学科1年高橋さくら
・この本を読むと、いつも、賢治が死を乗り越えようと足掻いている
 イメージを受けます。妹の死に傷ついたり、人生を戦い続けていたからこそ、
 最後にカンパネルラのお父さんが、すごく淡々とジョバンニのお父さんを
 心配するのかなと思います。途中で状況が変わってきて、
 お米がよくできるとか、大きいリンゴは自然にできるんだ、
 という会話が出てきますが、賢治はずっと農業をやっていて
 苦しんでいたので、理想の国、死んだ世界に行く列車の中で、
 その憧れのようなものが出ていたのではないかと思います。
 キリスト教に関する記述があったのは、仏教徒であるけれども、
 自分が救われないのは何か違うのかも、とずっと思っていたから
 他の宗教も取り入れたのではないかと思います。
 色の話しが出ていましたが、私はピンクサファイアのような
 キラキラしたピンクを感じます。

・死を乗り越えようということに、すごく共感できますよね。
 死を決して汚いとか辛いものとして書いてないですよね。
 例えば、鳥捕りが潰してしまった鳥も、そのまま生き返っても
 おかしくないような、そういった気楽さがある。
 たしかにカンパネルラは死んでしまったが、空の向こうで
 生きているような気安さがある。すごく寂しい一方で、
 何かどこかに救いがあるのではないかと感じました。

・淡々と書いていますが、賢治って内心、大暴れな人だった
 のではないかという感じがします。

・キリスト、西洋的な印象をうけたのですが、
 神様ってなんだろうという話しがあって、
 「本当の神様はもちろんたった一人です。」というせりふがあります。
 一神教を強調しているのかなと思いました。
 また、「向こうの川岸で二本の電信柱がちょうど
 両方から腕を組でいるように赤い電球を連ねて立っていました。」
 とあって、それを読んだときに、それまでキリスト教っぽく
 感じていたのですが、そのシーンでふと神社の鳥居を思い浮かべました。
 結局、ジョバンニはカンパネルラの試練の旅に
 同行したのではないかと思います。死ぬということは終わりではなく、
 今いる現実世界から死んだ後の世界へと汽車に乗って移住しているという
 感じがして、輪廻転生が生きているのかなと思いました。

・(先生)おもしろいですね。神社の発言は新しいと思います。
 今まで読んだものの中でもないです。場所も地域も国籍も無限定ですよね。
 だから今のを聞いて、西洋風のものを日本風に、日本風のものを西洋風に
 翻訳しようということを試しているような感じがしますね。

・星座や、主人公などの名前がカタカナだったりして、
 西洋風な感じがするが、どことなく和風な感じも受けます。

・(先生)咲いてる花とかね、リンドウや楡の木など、全部日本語で出てきて。

・私は最初読んだときから、日本が舞台なんじゃないかって、
 ずっと思っていました。でも、聞いてたら和洋折衷というか、
 多国籍な感じがして、場所は読んでいる人が勝手に設定しちゃって
 いいのかなと思いました。

・解説では、南イタリアに限定していましたね。
 ジョバンニ、カンパネルラっていうのはイタリア語名なので、
 おそらくそちらに引きずられたのでしょう。



<第二週>

・先週は、「銀河鉄道の夜」のイメージは何なのか、
 ということなどを考えながらもう一度読んでみようということに
 なりましたが、どうでしょう。

・私は先週、青と答えましたが、青がメインで、緑やピンクも
 混ざっているのではないかと思いました。
・キラキラした感じかなと思います。『耳をすませば』に出てくる
 ワンシーンのようにいろいろな色があって、銀河なので光っている
 感じをイメージしています。

・私も銀河のイメージでいうと濃い青というイメージなのですが、
 全体としては、暗い青なんだけれども、暗い赤があったり、
 煙がかかったようにぼやーっと光っていたりするイメージです。

・「銀河鉄道の夜」の感想は、奥が深いなということです。
 ジョバンニの成長物語として捉えて読みました。
 カンパネルラは最後には死んでしまうのですが、ジョバンニは自分の中に
 カンパネルラを取り込んだのではないかと思いました。

・(先生)1ページ毎に出てくる青を基調にして、それぞれの場面で
 象徴的な赤や、黒い石炭袋など、場面場面を象徴しています。
 そして視覚と同時に聴覚や嗅覚にも気をつけると、
 リンゴの香りや新世界交響曲など視覚以外にも象徴的なものが出てきています。

・私は読んだとき、夜というイメージが強いのか、闇や黒という
 印象なのですが、怖さを与えるものではなく、優しい闇という
 イメージです。全体の感想は、すごく面白みのある暗号を
 読んでいるような感じです。

・さっき先生が石炭袋と仰っていましたが、みんなは南十時星に行ったのに、
 カンパネルラだけが石炭袋に消えていくということが、
 カンパネルラは何か悪いことをしてしまったのだろうかと、
 悲しくなりました。色とそこに飲み込まれていく人のやったことに、
 何か関係があったらおもしろいなと思いました。
 「切符の話しの場面で、四次世界の鉄道なんて最後まで行けるような
 切符だよ。」というようなことが書いてあったのですが、
 銀河鉄道というもの自体の曖昧さや不完全さを、
 がしっと言っているセリフだと思いました。
 そこに散りばめられた色というのも、ぼんやりしたものでしかなくて、
 だからこそ、最後に透明な中に飲み込まれてしまうのだなと思いました。

・やっぱり暗い青というイメージで、その中にキラキラしたものや、
 ぼんやりした感じの色があるように感じました。特に赤とか。

・赤って怖いですか?

・怖くないです。

・きれいな赤ですか?

・そうですね。

・君は怖かった?

・うん、怖かった。

・(赤色の出てくる場面をいくつか探す)

・赤って意外とたくさん出てきてますね。

・(先生)「よだかの星」という賢治の童話では、山火事が出てきますが、
 おそらくそれは地獄の業火みたいなものをイメージさせる強烈な赤ですね。
 さそりも結構強烈なエピソードですね。捨身の精神ですけれど、
 その犠牲にした赤というものは、やっぱり違う赤ですよね。
 車掌の被っている帽子の赤と、ジャケッツの赤にも何か象徴が
 あるのかもしれないですね。

・花火と書いてあるので、夜空に花火のようにいろいろな色がある
 イメージと、この間の映画上映会で観た目が回るようなカラフルな
 映像が印象的で、そのイメージです。

・ここに出てくる花火は、カラフルな花火でしょうか?

・花火というと、カラフルなイメージです。

・天の川の窓の外じゃないですか。
 そのため、透明な白い花火をイメージする人もいて。

・色は黒っぽいイメージが強いのですが、その中に万華鏡のような
 キラキラしたものがあるというイメージです。
 でも、それも映画の影響なのかもしれません。

・ただ、面白いのは、賢治の時代は今ほど夜景も明るくないし、
 もちろん飛行機もないし、夜景のランプというのも、
 そんなに色とりどりであった訳ではないですし。
 私たちの想像力とは遥かに違う。彼は工学をやっていたし、
 鉱石の研究もしていたので、そういったイメージもあるのかもしれませんが。
 やっぱりこのイメージの出所はどこだったのでしょうか。
 銀河系の写真も今ほど立派なものが撮れていた訳ではないですし。

・私は今まで、本を読むのに色とかを考えたことがなかったので、
 もう一度読み返してみたいと思います。
 でも、私は青というイメージはなかったです。
 白というイメージでした。作品の最初のほうで、
 天の川の授業をしていたのが印象的で、理科の教科書などには、
 天の川は白く写って載っていたので、白というふうに感じました。

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