フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2006年度第6回読書会『雪渡り』を読む
感想 日本文学科2年 高松彩子

 宮坂先生をお招きした読書会は『雪渡り』を題材に話が進みました。
初めは感想を順に述べることから始まりました。狐の登場、
そして幻灯会という不思議な会について意見を交わしました。
みんな狐の可愛さに惹かれるものがあったようです。
 また掛け合いについても繰り返される独特のフレーズがはじめて
読んだ人の記憶に強く残るという結論に達しました。

・『雪渡り』という題名について
宮坂先生からのご意見によって浮上した『雪渡り』という題名への興味。
「雪」が1つのキーワード。そして「渡る」がまた1つのキーワードではないか?
「人の世界」と「幻想の世界」を「渡る」という考え方ができるのではないか
という意見には参加者からも賛同の意見が多く出ていたように感じました。
「雪」にはどこか冷たい印象を受けるのにこの『雪渡り』の物語はどこか
暖かいイメージが持てる。それは本文で用いられた「掛け合い」の
言葉における繰り返しが与える印象とリズムがもたらしているのではないか?
という宮坂先生の意見は十分納得できる意見であったと思います。

・「人の世界」と「異界」
森の中にはいることで別の世界に入る(「人の世界」とは別の場所)。
外国の作品には森の中に入っていくというのは「少し怖い場所へいく」という
表現が多いが、日本の作品には少ない。もっと親しみを持てるものとして
扱われる場合が多い。しかしこの『雪渡り』の世界では
「森の奥に入ることで<異界>へ渡っていく」という少し不穏な
雰囲気をかもし出している。
またこの「異界」へいくには年齢制限がある。11歳まではよくて、12歳は駄目。
狐達が行なう幻灯会(異界)への招待は厳しい年齢制限がある。
これは「人」は勿論「狐」にもいえることのようだ。
「異界」への招待は子供だけ。このことについての討論は少しマニアックな
ものになりましたが白熱したものになりました。

・「異界」からの帰還
映像的な美しさを持った場面であるという物語のラストは、
図書館に置かれていた絵本を参考に見ていきました。
人は豆粒のようにしか描かれていないこの絵からは自然の大きさを
うかがわせる絵で、何かに惹きこまれるような絵でした。

・幻灯の意味について
狐側から見た教訓、はたまた人から見た教訓なのか?それとも両者に
共通の教訓なのか?教訓と見せかけてもっと別の意味あいを秘めていたのか?
疑問ばかりが増え正直なところ最後まで結論がまとまらず疑問ばかりが
出て終わってしまったお題になりました。
しかし、いつか機会があればまた考えてみたいという、
参加者の意欲をうかがわせるお題ともなりました。

・表記について
日文学生が多いせいか、宮坂先生が歌部分の改行に注目したあとの
反応が素晴らしかった印象があります。
みんないっせいに手持ちの資料をチェックし、歌の改行、
同じ歌の違う点への注目とどんどん反応が返ってきました。

Copyright(c) 2000-2006, Ferris University Library. All Rights Reserved.