フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
28-4・特集.1 読書感想文コンクール入賞者発表-3
2005年8月5日発行読書運動通信28号掲載記事8件中4件目
特集:1・読書感想文コンクール入選者発表
   2・西村先生講演会アンケート
募集:朗読会朗読者求む!
   3・私たちの<今>を読む新規購入図書
第2席「傷ついた身体、砕かれた心」を読んで 国際交流学科 4年 山本真衣
この本を読みながら、私は恐怖に震えました。こんな経験は初めてでした。 
本を読んで恐怖を覚えたのは。私たちは、男性と同じように勉強ができ、
男性と同じ職場で働くことができる。夫婦に平等の権利があり、
離婚をすることができる。権利に守られている。
それがどれだけ恵まれているのか。いや、それは当たり前のこと。
当たり前でなければならないのです。でもその当たり前が、
世界のどれだけの国の女性にとって恵まれていることか。
本の中、当たり前のようにでてくる「強姦」という言葉。
強いものは弱いものを征服していく。そのように歴史は繰返されてきました。
いつだって、戦争には、女性への強姦が行われます。強いもの=男性。
そして力の弱い女性は、物のように、男性の快楽のために犠牲になるのです。
しかし、私がとても恐怖を感じたこと、一つ目は、その征服が、
日常生活において当たり前に行われていることでした。
征服者は、戦争で占領した者たちだけではなかったのです。
ごく普通の家庭の中で夫であったり、また政府であったり警察官であるのです。
もしくは血のつながった家族かもしれません。家族によって、結婚を決められ、
お金で花嫁として売られて「愛しあって結婚する」という当たり前のことさえも、
できない女性たちがいるのです。
そして2つ目は、「強姦」されたことにより、加害者が裁かれるのでなく、
被害者が「姦通」として裁かれる事です。一体誰を信じて、
誰に助けを求めればいいのでしょうか。誰もいません。
「強姦」の被害者でありながら、誰にも言えないのです。
むしろ、もし言ったのなら、犯罪者や「汚いもの」のように周りに
冷たい目で見られてしまう。さらに罰を与えられ、鞭打ちや、
投獄されてしまうかもしれないのです。
本の中で、もっとも印象にのこったのは、写真です。
その目は悲しみにあふれています。性虐待を受けた女性、
硫酸を顔にかけられた女性。それは、振られた腹いせや、夫によってです。
一時的なものでなく、一生消えない傷です。この世の誰にそんなことをする
権利があるのでしょうか。
しかし、そんな考えとは反対に、地位が高ければ、地位の低い人々に
何をしても許されている国が現実にあるのです。そして、力が強い男性が
女性を支配しているのです。
温かい家の中で、家族に守られている私たち。そして世の中には、
「虐待を運命だと感じ、静かに耐えている」女性たちがいます。
この差は何なのでしょう。もちろん国や文化、考え方の違いもあります。
しかし、人間の尊厳は世界共通なはずです。
しかし、虐待、暴力は、日本国内でもあることで、例えばDVなど。
ただ私が恵まれていただけで、無知だったのではないかと思いました。
本の最後に、わたしたちにできることは、まず知ることだと書いてありました。
日本でも、まだまだDVDや、まして世界の状況など、関心を持たなければ
広まっていません。
例えば、身近なことで考えてみれば、日本はいまだ「人身売買監査対象国」と
されています。
アジアの国などから悪質なブローカーが、女性を連れてきて、日本で監禁し、
売春をさせるのです。日常的に、暴力も受けます。狭い部屋に何人も生活し、
人間以下の扱いを受けている女性がいます。もちろん、このような状況は、
ブローカーや団体が悪いのですが、私たち、また政府の意識の弱さにも
非はあるのではないのでしょうか。「ホステス」と言うと何か私たちとは
違うという意識があります。しかしそのような意識を捨てて、
同じ女性であって、きちんとした権利があるのです。そして、
日陰の存在で苦しんでいる多くの女性が、すぐ近くにいるという意識を
いつでも持たなければなりません。そんな意識が、今苦しんでいる女性たち、
私たちを救うことになるのです。
また、最近「監禁」のニュースが多いと思います。日本で、私のすぐまわりで
起こった事件です。世界に今何人、何万人の人々が、監禁され、
もしくは拷問され、女性ならば性暴力を受けているのでしょうか。
私たちの想像を絶する数の人々だと思います。それは、普通の家庭かもしれません。
または、売春婦として働かされているかもしれません。どこか牢獄かもしれません。
遠かったものが、よく考えてみれば身近に起こっているのです。
「監禁」も「強姦」も言葉にしてみたら、すごく簡単です。
でも実際自分の身に起こったとき、一体どうなってしまうのでしょう。
想像もできません。傷ついて、人に言うことも恥ずかしい、
家族にも打ち明けられない、生きていくのも嫌になるかもしれません。
どうやって立ち直るのかも、自分のことでさえ嫌いになってしまうかも
しれません。身体だけでなく精神も傷つけられる。そしてそれは一生
消えることのない傷。砕かれた心は元の形には戻らないのです。
被害者であるのに、まわりからの冷たい目や、被害者にも非が
あったように言われる、そして自分を責め続けるのです。
しかしそれは違います。悪いのは加害者であり、被害にあった女性たちを
白い目で見る周りの人々です。そういう社会を作らなければならないのです。
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