フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
33-5・本を読んで考えたこと〜随想コンクール結果発表-3
2006年6月30日発行読書運動通信33号掲載記事9件中5件目
特集:コンクール結果発表(随想コンクール・ポスター標語コンクール)
紹介:宮沢賢治の本〜第1回
募集:創作コンクール、賢治の世界・イメージ展
 
同 第二席 『ガールを読んで考えたこと』
コミュニケーション学科1年 辻井陽子

幸せとはなんだろうか。私達が幸せになることはできるのだろうか。
 夫のヒロよりも稼ぎのよい女性チーフの聖子と仕事は男のものであると考える
会社の部下、今井との間の争いや会社の派閥について格闘する女性の姿。会社の
中での女性蔑視について書かれた「ヒロくん」。女性のマンション購入と女性の
生き方について描かれた、「マンション」。マンション購入と秘書課の花形、香織と
会社の派閥の言い争いに巻き込まれながらも必死に30代の女性の生き方を考える
広報課のゆかりの物語。一生、女性はガールとして生きられるのか。派手な先輩、
お光と、女性は一生ガールでいられるのかと考え始める、30代女性の由紀子の
物語「ガール」。シングルマザーで仕事もこなす孝子とキャリアウーマンの里佳子。
シングルマザーの立場とシングルマザーという言葉の重みについての「ワーキング
マザー」。一回り違う新入社員の和田が気になる容子。この気持ちは
恋なのだろうかと考える「一回り」。
 そんな5章に登場する女性達にとても共感を覚えると同時に尊敬の気持ちが
生まれた。私達はこれから社会にでて、会社で働くことになるだろう。その、
不鮮明な未来には様々な難題も待ち受けている。
 大学の授業で女性と仕事について調べ、考えることになった。今、多くの女性が
仕事をしたい、結婚しても続けたいという気持ちを持っている。しかし、今から
20年前ほどの女性は、仕事を続けたい気持ちがあっても仕事は結婚までの
つなぎという考えを持っていた。現代の女性は結婚をしても仕事を続けたいが、
子どもが生まれたら仕事をやめると考える人も多いことが現実である。それは、
育児休暇や託児所の不足が理由の一つとして挙げられる。また、女性は家庭に入り
子どもの世話をすることこそが大切であると考える人が多いことも理由であろう。
確かに、今仕事も家庭も両立している女性は少ない。しかし、両立している女性は
一人で家庭を抱え込んでいるのではなく、夫や家族という周囲との協力があることは
事実である。このことから、やはり女性が働くには、周りの人の協力や社会全体で
働く女性についての考慮が必要である。
 私は、「一生一ガール」という言葉にとても心動かされた。年をとって
ゆくことは、喜ばしいことであるが、一方で恐ろしいものでもある。私も
気がつけば、もう18歳になり化粧や洋服に興味を持ちはじめ、大人の女性へと
変わってゆく時期でもある。小さい頃は、早く大人になりたくてしょうがなかった
私が、もうそんな歳だとは考えられない。18歳といえばもっと大人でしっかりした
年齢であると思っていたのだから、30歳までは少ない年月で辿り着いてしまう。
30代でガールとして、人生を楽しんでいる女性は何人いるだろうか。
多くの女性は、大人になると「ガール」ではなく、一人の人間として、自分を
見はじめている時期であろう。もし、今までの私がこの立場であれば、私も
「一人のガール」として生きていこうと考えることはなかったと考える。
しかし、このフェリス女学院大学の学生は「一生一ガール」として、
生きていけるのではないかと思う。自分を美しく見せる、着飾る方法を
知っている人が多いことや、自分の意見をしっかり持っている人が多いからである。
彼女達は女性、ガールとして自分を自覚し、生きていてすばらしいと思う。
私もこの大学に入って、少しずつでもその考え方をもてたらよいと思う。女性は、
会社の中などで差別や、結婚、出産とたくさんの難題を抱えていることが多い。
しかし女性には難題だけが課されているのではない。女性に生まれたからには、
女の子として楽しむ、「一生一ガール」であることがよいのだ。
 「負け犬の遠吠え」という本が2004年にベストセラーになり、30代未婚、
子ナシの負け犬と呼ばれる女性だけでなく、多くの女性がこの本を読んだ。
多くの女性がまた、自分の生き方、考え方、幸せについて考えたのである。
私はこの負け犬の遠吠えという話を、久本雅美主演のドラマで見た。
それまでの私の夢は一生懸命仕事をし、素敵な男性と出会い、玉の輿にのって、
悠々自適の生活を送り、幸せに暮らすという、誰もが一度は夢見るものであった。
しかし、大人になるにつれ、そのような考えの甘さに気づいた。幸せとは何だろう、
私は何をしてこれから生きていくのだろうと考えた。私にも就きたい仕事はある。
しかし、その職に就くことが幸せかどうかはわからない。結婚は新しい家族が
できることで幸せなことである。しかし、結婚生活や専業主婦の仕事は単調で
変化のない生活であり、幸せであるとは言い切れないのだ。仕事をこなし続ける
キャリアウーマンと、結婚し家庭を支え続ける主婦、どちらも相手のことを
うらやみ、自分の今いる立場に納得できないでいる。私は、幸せ、
ゴールなんてものはないのだと思う。自分が今、幸せであると思うことが、
幸せなのである。あの、モーリス・メーテルリンクの「青い鳥」と同じである。
人は気持ち次第なのである。なぜなら、会社で働き続ける
キャリアウーマンの女性も、結婚と仕事を両立する女性も、
主婦の女性も、全てが働く女性であり、一人の女性だからである。
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