フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
03-2・私の勧めるこの1冊-1
2003年5月12日発行『読書運動通信3号』掲載記事2件中2件目 *この記事は1-3まであります
『スタンド・バイ・ミー〜恐怖の四季 秋冬編〜』(新潮文庫) −少年が「大人」になる日ー
 人間の一生って、少年時代に囁かれた何気ない言葉や戯れに投げたコインの
裏表なんかで決まってしまいがちなものなのかも知れない。長い人生何が起こる
かなんて予想のつかない無知な子供は、周りからの自分に対する評価・評判を
とりあえずの「自己規定」と置く。だって、皆がそう言っているのだから、
こういうものなのだから、僕はそういう人間に違いない、と。
 だから彼らは目に分かりやすい運命のレールにそのまま沿って歩いてみる。
しかし、それは完全なる自分の意志ではないので途中で「違う」と感じたりもする。
 ほら、後ろから列車が迫って来たよ。その時は、さて、どうしよう?
 死んだ兄と同じく頭は良いけれど両親から愛を与えてもらえない
作家志望のゴーディ。「不良少年予備軍」のサラブレッド扱いをされる、
しかし喧嘩の仲裁が得意な人望溢れるクリス。戦争神経症の父親に耳を焼かれ
補聴器を付けているものの彼と同じ兵隊に憧れているテディ。仲間内で
1番子供っぽく留年して5年生をやり直し中の(割と足手まといな)バーン。
 彼らはジュニアハイ進学目前の夏休みに、有名人になろうと「死体探し」の旅
に出る。その旅の中で彼らは汚い台詞や軽い冗談を共通コードに互いを認めあう、
もしくは許しあう、成長しあう。
 とにかく、この子供独特のたわいないやりとりが本当に最高なのだ。
全く歯に衣着せない。
 「反吐ってのは、ほんと、クール」なんだから、「はしたない」という形容詞を
覚える前の無垢な心で彼らと共に屈託なく笑ったり、また、教室のミルク代盗難の
真相が明かされる場面ではその理不尽さに一緒に涙し怒りをぶつけたい。 シモンズ先生のバーカ、ブース!
 でもやはり、そこにあった筈の幸せが遠いものになってしまうなんて
何よりのホラーだからこの話の結末は少し苦手だったりするけれど。
それを乗り越える、という事が、「大人になる」という事なのでしょうか。
(日本学科4年 真いづみ)
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