フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
31-10・私たちの《今》を読む
2006年4月25日発行読書運動通信31号掲載記事14件中10件目
  特集:キャンパスライフ
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『六番目の小夜子』 恩田陸著 新潮文庫
学校には決まり事があります――ある校舎の階段は一段ずつ上らなくてはいけない。
3階の女子トイレの奥から2番目に入るときはある作法をしなくてはいけない。
夕方の四時以降に踊場を通るときは鏡を振り返って見てはいけない。
こういった決まり事や約束事を破ると何かが起るといわれていますが、
その実、本当に破ったとしても何かが起こるわけではないのです。
これは退屈な日常を刺激的にするための「ゲーム」なのです。
「してはいけないこと」をするとどうなるのか。
そして、在学期間中きちんとその「ルール」を守れるのか、という。

もちろん、校則は守るに越したことはないのですが。
   加藤は高校3年に進学した時に、「サヨコ」の鍵と
その年の「サヨコ」が行う指令書を受け取った。
しかし、始業式のときに「サヨコ」役の彼を先回りをして、別の「サヨコ」が現れた。
転校生の津村小夜子。
彼女もまた、転校した日に「サヨコ」の鍵と指令書を受け取っていた。

この『六番目の小夜子』に書かれているのは、どこにでもありそうな進学校であり、
そこに登場する人物たちはごくありふれた高校三年生です。
そして彼らを取り巻くのもまた至って平凡な日常です。
そうした中で、学校で行われる、普遍的でありながら刺激的な「ゲーム」をめぐって
物語が進行していきます。そんな中で主人公の関根秋や彼の友人たちは、
自分自身のことや友達関係、進学のことなどに悩みながらも、
答えを見つけていきます。
また、彼らが学校という閉じられた空間から抜け出そうと苦しむところや、
小さな刺激を求めているところも、私たちに通じるものがあるように感じられます。
私たちは常に「飽きないゲーム」を求めています。
が、気がついていないだけで日常生活そのものが「ゲーム」なのではないでしょうか。
私たちが大学で過ごす4年間はとても短いかもしれません。
けれども様々な発見や出逢いは大学生活を刺激的にしてくれるはずです。
(日文3年柿沼友香)
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