フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
32-6・特集.2 書店のオススメの本-2
2006年5月31日発行読書運動通信32号掲載記事9件中6件目
特集:1・就職/2・書店のオススメの本
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『日本沈没/上・下』小松左京 著 小学館文庫
 草剪剛、柴咲コウ主演の映画『日本沈没』の原作です。
伊豆諸島の小島の1つが海中に没するという異常事態が起った。
調査に急行した小野寺と物理学者の田所は、日本海溝の底で起きている大異変に気づく。
同時に日本全土では大地震や、富士山を始めとする火山の噴火などが頻発し、
国民はパニックの渦に巻き込まれていく。
政府は極秘に日本人全員を海外へ移住させる計画を立てはじめたが、そんな中、
関東地方を超巨大地震が襲い、東京は壊滅状態におちいってしまう。
果たして日本は本当に沈没してしまうのだろうか。人々は生き延びることができるのか。
今から30年以上も前に書かれた作品とは思えないほど、リアリティがあって、
読んでいて恐くなってきます。現代の科学の常識に照らし合わせてみれば、
説得力のない場面もあるのかもしれませんし、携帯電話やインターネットでの
抗争情報通信網が発達した私たちの目から見ると、歯がゆいところがないとは言えません。
またパニックものにありがちなことで、人物描写がやや薄っぺらに感じられる部分もあります。
が、それらを差し引いても、非常に面白い1冊です。息詰まるような状況設定、
圧倒的な展開で最後までダレルことなく私たち読者を引っ張っていってくれます。
この小説の主人公は、人ではなく自然です。五月晴れとは程遠い今年の初夏の悪天候や、
近年世界中で発生する巨大台風や大雨、大雪、大津波。これらの異常気象を考えても、
この小説をフィクションと笑いとばせないほど、地球環境は悪化しているのではないでしょうか。
現実の日本沈没、地球壊滅を食い止めるために、私たちはありとあらゆる手段を
講じなければならない時期が来ているのかもしれません。
(Y書店 斉藤)
*図書館職員の友人で、書店に勤務している方にご寄稿いただきました。
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