フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度15-2・先生方の一冊-1
2004年4月22日発行読書運動通信15号掲載記事2件中2件目
特集:先生方の一冊
*この記事は1-2まであります。
質問
1. 好きな本や作家について、ご自由にお書きください。 
2. 今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書きください。
3. 先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書きください。
4. 今から読みたいと思っている本があればお書きください。
*回答は先生からいただいたものをそのまま載せています。
音楽学部器楽学科  堀由紀子教授
1.
好きな作家はトーマス・マン。30歳でスイスに留学した時に、
たまたま荷物の中に入れてあった文庫本の『魔の山』に引き込まれ、
もっと彼の本が読みたくなった。けれど全集は絶版となっており、
神田の古本屋で見つけても12万という値がついていて、学生の身では手が出ない。
そのうちに、少し分かるようになったドイツ語で読み始めたが、
彼の文章の長いこと、1ページにピリオド2つ、という具合で、
一向に前に進まない。
帰国して勤め始めたフェリスの図書館で、憧れの淡い水色の全集を見つけた時には、
もう一度にフェリスが大好きになった。でもやっぱり自分の手もとに置きたいなあ、
と、頭をもたげる所有欲と戦ううちに、親しい数学者の家に遊びに行ってこれを発見。
ホコリをかぶっている様子だったので、「これって読んでる?」から始まり、
商談(?)成立。破格の値段で譲ってくれ、おまけにとびきりの
赤ワインまでつけてくれたのだった。

三浦)一冊の本からその作家さんに引き込まれるというのは
私も体験したことがあります。そして、所有欲が湧いてきて、
買ってしまったりしました。
好きな本が手元にあるというのは本当に嬉しいですよね。

2.
G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』、ソポクレス『オイディプス王』

三浦)この2冊がお勧めだそうです。皆さん是非読んでみてください。
そして、何故先生がこの本を勧めてくださったのか、考えてみるのも
面白いのではないでしょうか。

3.
12歳の頃、ドストイェフスキーの『罪と罰』や、スタンダールの
『赤と黒』など、とにかく火のように激しい感情が呼び起こされるものが
好きだった。当時新しく教えて下さることになったピアノの先生は、
「1日に5時間さらわなければこの子はクビにします。」とやはり
火のように厳しく、しかしそんなにさらうなんて、考えただけでも血の気が失せた。
聞き耳を立てているであろう家人の手前、とにかく何とか音は出さなければ、
と考えた結果、楽譜の上に小説本を置き、これを読みながらピアノを弾く
という習慣が生まれた。楽譜の方が本よりもずっと大きいため、
v うまくずらせながらやると結構うまく行くのである。
それに、楽譜をはやく覚えてしまった方が本が楽しめるので手っ取り早く
暗譜をする癖もついた。小説の内容が激しくなって興奮してくると、
その興奮を自分でも表わすために曲の激しい部分を取り出しては弾き、
「うーん、2つ重ねるとすごい迫力!」などと悦に入っていた。
ショパンのスケルツォ第1番や、ベートーヴェンの悲愴ソナタなどは、
v 特に登場回数が多かった。
(ピアノの先生からは毎週のようにクビ!と叫ばれていたが・・・)
芥川の『羅生門』は、何か合わないなあと思いながらも何とかゴリ押したのだが、
『或阿呆の一生』でついにどちらも訳がわからなくなり、
この楽しかった習慣にもピリオドが打たれたのだった。

三浦)私もスタンダールの『赤と黒』を読んだ時はいろいろな感情が
湧きあがってきたのを覚えています。
楽譜の上に小説を置き読みながらピアノを弾いていたなんて凄いです。
今年の一冊の本から感じたものを、是非先生にも演奏していただきたいです。

4.
プルースト『失われた時を求めて』

三浦)私もこの作品は読んだことがないので是非読んでみたいです。
皆さんもこの作品を読んで、先生とお話ししてみてはいかがでしょうか。
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