フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
01-1・今年の《一冊の本》2003
2003年4月8日発行『読書運動通信1号』掲載記事4件中1件目
●宮部みゆき ミステリーの中の〈社会〉と〈時代〉を読む●
 に決定しました。昨年のマフマルバフ監督の『アフガニスタンの仏像は
破壊されたのではない、恥辱のあまりくずれおちたのだ』の格調の高さ
と比べると、何とまあ軟弱なテーマだと思われるかもしれません。
 まして、去年の米軍によるアフガニスタン攻略に続いての、
イラク侵攻のさ中です。こんなにも、世界の情勢が緊迫している時に、
エンターテイメント。それも、現代を代表するベストセラーの作品を
なぜ取り上げる必要があるのか不思議だと思われるかもしれません。

●なぜ、宮部みゆきか?●
 宮部みゆきはただ単にベストセラー作家であるのではなく、
実に見事な現代という「社会・時代・家族の語り手」なのです。
 私たちは現代の拡散した時代の中でどう「私」という
存在のアイデンティティを確認できるのか。私の「家族」、
私の「家」はどうつなぎとめられるのか、どう築いていくのかを
根源的なところで問い直そうとする、うまくて、見事な書き手なのです。

●なぜ、ミステリーか?●
 ミステリーとは、犯罪の謎解きを指しますが、犯罪とは
現代のさまざまなひずみが生み出すものです。カード破産・住宅ローン破産、
性犯罪、などの社会の歪みとひずみの果てに生み出される「犯罪」に
目を向けながら、宮部みゆきはどこまでも一人の人間と家族の問題を捨てずに、
追い詰めていきます。楽しくて、面白くて、どきどきするのに、
その一方で社会をしっかり見ているところ。メディアのまやかしを
果敢に暴いていくところに宮部みゆきの真骨頂があります。
みなさんも、宮部ワールドにちょっと足を踏み入れてみませんか。
 読書運動プロジェクトは、この宮部みゆきの諸作品を軸に
現代の問題に迫っていきたいと考えています。

●学生提案の授業でも展開●
 なお、今年から始まった「私たちの学びたいこと」という学生提案の授業に、
この「宮部みゆきに現代を読む」を提案したところ、採用されました。
 月曜日二限に安藤公美先生がご担当になります。学生主体の授業の進め方を
してくださるとうかがっています。興味ある方はぜひご参加ください。

●今なら、安く買えます!●
 なお、授業でも取り上げる宮部みゆきの代表作『火車』は、
学外オリエンテーションのときに、割引で購入できます。
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