フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
04-1・Beatrix Potter の“The Tale of Peter Rabbit” を読む
2003年5月30日発行『読書運動通信4号』掲載記事7件中1件目
─ビクトリア朝時代の〈女性の生き方〉と〈絵本の魅力〉を知る─
 英国ビクトリア朝時代に生まれ育ったビアトリクス・ポターは、
現代からみると、信じられないくらい寂しく辛い子ども時代をすごしました。
当時の裕福な家庭の子どもたちは、自分の親ではなく、乳母や家庭教師に育てられ、
友だちと遊ぶこともできず、いつも子ども部屋ですごしたのです。大人になっても、
この時代、この階級の若い女性が職業をもつことは許されませんでした。
さまざまな才能に恵まれていたにもかかわらず、彼女は何度も挫折を経験します。
さらに彼女は婚約者が急死してしまいます。
 そんな女性が、なぜ世界でもっとも有名な絵本作家となれたのでしょうか。
この読書運動では、作品を味わうと同時に、彼女の生き方を
学んでみたいと思います。
 ポターは、すぐれた作家・芸術家です。彼女は“The Tale of Peter Rabbit”
(邦訳『ピーターラビットのおはなし』)をはじめ、たくさんの作品を残しました。
これらの作品はどのようにして生まれたのでしょうか。作家の生きた時代、背景は
作品と深い関係があります。彼女の場合、生涯、自然とともに生きた人です。
しかしながら、彼女は生涯の多くを実はロンドンですごしているのです。
都会の裕福な家庭で育った女性が、なぜ湖水地方に住むことになり、
やがて立派な農場経営者になってしまうのでしょうか。さらに、
ポターは英国の自然保護運動の基を築くことに大きな貢献をした人としても
知られています。まことに興味深い女性です。
 もちろん、ポターの作品はおもしろいのです。この作品がこんなに読み継がれる
理由はどこにあるのでしょうか。語りの特質、自然、動物の擬人化、ユーモア、
また徹底した写実主義などなど...この読書運動では、作品を味わいながら、
作品の秘密も解き明かしていきたいと願っています。
 上記、〈女性の生き方〉と〈絵本の魅力〉を学ぶために、作品を読むと同時に
“Beatrix Potter and Peter Rabbit”という副読本を用意しましたので、
合わせて読んでみてください。
(文学部教授 藤本朝巳)

(1)“The Tale of Peter Rabbit”
 by Beatrix Potter
 Frederick Warne & Co. Ltd., London,1902. (邦訳『ピーターラビットのおはなし』、ビアトリクス・ポター作・絵、
 いしいももこ訳、福音館書店)
(2)(副読本)“Beatrix Potter and Peter Rabbit”,
 text by Nicole Savy and DianaSyrat,
 Frederick Warne & Co. Ltd., London, 1993.

今年の《一冊の本》2003第2企画
*6月2日(月)ピーターラビットの映画上映会と藤本先生のお話
 場所:キダーホール
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