フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
13-2・先生方の一冊-1
2003年12月22日発行読書運動通信13号掲載記事2件中2件目
特集:先生方の一冊
*この記事は1-4まであります。
質問
1.好きな本や作家について、ご自由にお書きください。
2.今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書きください。
3.先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書きください。
4.今から読みたいと思っている本があればお書きください。
日本文学科  三田村雅子教授
1.
中学生の頃は太宰治、高校の頃は芥川龍之介とドストエフスキー、
大学では泉鏡花・谷崎潤一郎のファンになりました。ロレンス・ダレルの
アレクサンドリア・クァルテットなども好きです。おどろおどろしい
耽美派が好きなのだと思います。泉鏡花や谷崎については論文を書いてみたい
くらい思い入れがあります。
寝る前には必ずミステリーを読みます。海外のものがほとんどですが、
高村薫・宮部みゆきなどもたまに手を出します。ミステリーの駄作・凡作を
山のように読んできたおかげで、本当にいい本、好きな本を自分の嗅覚・触覚で
発見できるようになりました。好きな作家は徹底的に読み、又、繰り返して読みます。
好きになると必ず分析したり、研究したくなるところが研究者の悪い癖です。
ミステリーではローレンス・ブロック、ルース・レンドルが好きです。
優)とてもたくさんの本を三田村先生は読まれているようですね。
個人的に先生の谷崎論文楽しみにしています。

2.
今、小川洋子の『博士の愛した数式』を繰り返し読んでいます。
若いころの交通事故によって、記憶の回路がこわれてしまって、
たった80分しか記憶のつづかない天才数学者の博士と、その身の回りの
世話をするために雇われた家政婦と、その息子の数字と阪神タイガースへの
情熱を契機とした切ない愛の物語です。永遠に積み上げてはいけない博士の
「愛」を、そうであることを充分に承知しつつ、その「瞬間の愛」に
生きることを選ぶ悲しい覚悟の物語。忘れることの無惨さと、そうだからこそ、
今の瞬間が輝くこと納得させられる胸に沁みる小説でした。
神経過敏な男の子や女の子を書いていた小川洋子が、老人と少年の
こんなにも美しく、切ない小説を書けるとは、と改めて見直し、
感動した作品でした。誰でも好きになる保障はできませんが、
子供とタイガースの好きな方にはお薦めです。

   優)私は子供が好きなので読んでみたいと思います。しかし、
なぜタイガースなんでしょうね。小川洋子がファンなんでしょうか・・・・・・?

3.
一番衝撃を受けた作品はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』でした。
この長い長い本を繰り返し繰り返し読んだ時の興奮は忘れられません。
圧倒的な力でねじ伏せられた思いがあり、それが何とも言えぬ快感でした。
高校生の時はドストエフスキーが好きな友人たちと図書館を占領し、
文学について、哲学について、歴史についてずっと語り合っていました。
図書館のお姉さん(司書さん?)からはいつもうるさいから静かにしろと
注意されていましたが、それにもめげず、本から受けた感激を伝え合って
確認していました。

優)本に圧倒的な力を受けたこと・・・私は源氏物語がそうでした。
図書館を占領しての語り合い・・・本の話って興奮すると声が
大きくなってしまいますよね。

4.三条西実隆の日記を少し時間をかけて読んでみようと思っています。
全12冊ぐらいですから1年間ぐらいかかるかもしれません
(これは商売上の必要からですから純粋な読書とはいえませんね。)
去年読もうと思って読み損ねた水村美苗の『本格小説』なども寝床で、
眠りの前に読むにはいいかなと思っています。

優)先生の読書の時間は眠る前なんですね。私は寝る前に殺人ものを
読んだら夢で人を殺してしまいました。

注)回答は先生からいただいたものをそのまま載せています。
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