フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度18-2・特集 先生方の一冊-1
2004年7月7日発行読書運動通信18号掲載記事3件中2件目
  特集:先生方の一冊
*この記事は1-4まであります。
読書運動通信18号は、先生方に行ったアンケートの回答の第4回目です。
今回は国際交流学部の早川先生と馬橋先生、春木先生の回答を掲載しております。

【質問】
1. 好きな本や作家について、ご自由にお書きください。
2. 今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書きください。
3. 先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書きください。
4. 今から読みたいと思っている本があればお書きください。

*回答は先生からいただいたものをそのまま載せています。

国際交流学部 早川嘉春教授
1. 好きな本や作家について、ご自由にお書きください。

  考えてみると、自分には似合わないようなことを書くようで
気がひける感があるのですが、大学卒業後、社会に出てから、
山本周五郎という作家が好きになって、文庫本で出ている作品は
全て読んだと思います。江戸庶民の情感を描いた作品で、
川端康成がノーベル文学賞を受賞したときには、
山本周五郎こそ日本ではこの賞に価するのに、
と心中一人で憤慨していたことを思い出します。
いまこの文庫本は、外国で日本語・文学を学ぶ人達のために寄贈して、
手元には一冊も残っていません。
あとで聞いた話ですが、少し難し過ぎたようで、学生達には殆ど読まれず、
先生たちの愛読書になっている、とのことでした。

三浦)私も山本周五郎は好きです。
先生方の愛読書になっているなんてそれもすごいことだと思います。

2. 今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書きください。

どの本がお薦め、というものが今すぐに思いつかないのですが、
ともかく好きだと思える作家の本を手当たり次第に読む、
ということをお薦めしておきたいですね。
本はその作家の思いの丈が盛り込まれているものだと思っています。
自分だけの思いや人生だけでなく、本を通して他の人の人生や思いを
読み取れるのが読書なのだ、と考えています。
本を読むことを通して、何人もの人の人生観を自分の中に取り入れられるわけで、
こんなに自分を豊かにする早道はないのではないか、と思います。

3. 先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書きください。

「一冊」と限定されるとつらい感じです。
高校や大学時代は、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』
『真夏の夜の夢』『リア王』なんかの日本語訳を文庫本で買って、
よく読んでいたものです。
英文学科の先生方にはこう書くと笑われると思いますが、
青春時代には英文学を将来は学ぼう、なんて考えていた一頃があったと記憶します。
自分の人生に節目をつくった人で、インドのタゴールという作家がいます。
この作家の短い詩が大きくわたしの人生に影響を与えたことは事実です。
教会で礼拝をしている人に向って、石切り場で働くあの人の上に神はいないのか、
と問いかける2,3行の詩です。『タゴール著作集』
(確か「アポロン社」という所から出されたもの)というのがあって、
その中で読んだ詩でした。

三浦)一冊に限定されると辛いとおっしゃるということは
先生はかなりの量の本を読んでいらっしゃるということですね。
私も自分の人生に影響を与えてくれる作家に出会いたいです。

4. 今から読みたいと思っている本があればお書きください。

今は、「読みたい」と思う本よりは「読まなければ」と思う本の方が多いですね。
「読書」というよりは「研究」のための本、ということですから、
この設問に対しては、書名をあげたとしても、
相応しい回答ではなくなると思います。
既に他界されましたが、わたしが師と仰ぐ韓国の学者でイー・ヒースンという方
(韓国の『国語大辞典』の編者)(編者注:李煕昇 イ・ヒスンとも表記される)が、
60歳を過ぎられて、ご自分の研究は「日暮れて道遠し」だと
語っていらっしゃったことがあります。
厚かましくも先生のお言葉をお借りすれば、同じ思い、というよりは、
いらつく思いの日々の方が多い感じですね。
やはり、と言っては陳腐ですが、若くて体力の盛んなときに読書はしておきたい、
と思います。

三浦)読まなければという本は私も多いです。
読みたい本が読めないのは辛いことですよね。
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