フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度19-2・特集 先生方の一冊-1
2004年11月5日発行読書運動通信19号掲載記事2件中2件目
特集:先生方の一冊
*この記事は1-7まであります。
[質問]
1.好きな本や作家について、ご自由にお書きください 2.今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書きください 3.先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書きください 4.いまから読みたいと思っている本があればお書きください *回答は先生からいただいたものをそのまま載せています 1.好きな本や作家について、ご自由にお書き下さい

 
英文学科 新川健三郎教授
大学生の頃は日本や海外の文学作品に浸り、
その後ミステリーを楽しむ時期もあったが、
近年(といっても20年近くなるが)は専攻が歴史学のせいか、
歴史の動きと関わりの深い作品に接し、それを通して現実の社会の動きや
そこでの人間の生き方について考えることに読書の有難味を感じている。
若干の例をあげれば、五味川純平や、吉村昭をはじめ、
司馬遼太郎や塩野七生などの作品も手にすることが多い。

三浦)私も司馬遼太郎は好きです。
『燃えよ剣』がすごく好きではまってしまいました。
皆さんも先生のお好きな作家さんの本を読んで
それについてお話してはいかがでしょうか。

2.今、フェリスの学生に薦めたい本があればお書き下さい

                                 個人的な気持ちにすぎないが、大学生の時期には日本作家であれ
海外の作品の翻訳であれ、古典的ともいえる文学作品を貪欲に読んで、
心の糧にして欲しいと思う。
いわゆる活字離れの傾向が強まりつつあるので、
いっそうそうしたことを心がけてもらいたい。
実際に卒業するとそうした教養的な読書のゆとりを持ち難くなるのではないか。
それから戦争を経験していない世代だけに、古い作品ではあるが、
戦争と直面した人間の極限状況を描いた五味川純平『人間の条件』や
ノーマン・メイラー『裸者と死者』といった作品を手にしてほしいと思っている。

三浦)私も古典を読むことは必要なことだと思います。
確かに社会に出て働きだしてからではそのような
作品にふれることもなくなってしまうかもしれませんね。
今もこの世界では戦争がおきています。
そうした状況を食い止めるためにも戦争がどういうもので、
人々にどのような影響を及ぼすかを私たちは知る必要があるとも思います。
先生すばらしいご意見ありがとうございました。

3.先生の「青春の一冊」及び、その本にまつわるエピソードをお書き下さい

         多読・乱読だったので、「一冊」というと困惑するが、
普通の読書とは異なる読み方をしたという意味で、
個人的に特別な思い出のある本を挙げておきたい。
一つは菊池寛『恩讐の彼方に』。中学一年の夏休みの宿題で感想文を書いたが、
小説の面白さに目を開かれた。
後年小説の舞台であった耶馬渓の青の洞門を訪れ、
文学の世界に導かれたことに感謝した。
もう一つは、エミリ・ブロンテの『嵐が丘』で、高校一年夏休みの宿題だが、
かなり真剣に評論的な内容のものをまとめた。
だが、同時に文学に取り組むことの難しさを痛感し、
文学青年になることを断念した。
ただし後に訪英の際にウエストミンスター寺院に赴き、
ブロンテ姉妹の墓参りをした。

三浦)菊池寛は私は『父帰る』が好きです。
小林秀雄も菊池寛はうまいと評論するくらい『恩讐の彼方に』はすばらしい作品です。
皆さんも是非読んでみてはいかがでしょうか。
『嵐が丘』は知っている方も多い作品ではないでしょうか。

4.今から読みたいと思っている本があれば、お書き下さい

                学術と関連のある分野を別とすると、高齢になったせいか、
最近若かった頃に読み耽り感動した文学書を、
もう一度読み返してみたいという誘惑にかられている。
例えば大学生時代に手にした新潮社の現代世界文学全集を古い書棚から取り出して、
ヘルマン・ヘッセ『春の嵐』、ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』、
ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』等々(以下きりがないので省略)、
人生経験をそれなりに経た眼で接して、どのような新しい感慨を覚えるか、
以前のそれと比較してみたい気持ちでいる。

三浦)感動した本は何度でも読み返したくなりますよね。
私も昔読んで感動した本をもう一度読み返したくなりました。
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