フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
29・30-9・特集.2 食と文学-3
2005年11月24日発行読書運動通信29・30合併特大号掲載記事16件中9件目
特集:1.携帯本/2・食と文学
お知らせ:1.文部科学省特色GP採択について/2.イベントについて
  
口にするたび思い出すもの
『卒業〜雪月花殺人ゲーム〜』 東野圭吾/著

7人の大学4年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。
ある日、祥子が自室で死んだ。部屋は密室。自殺か、他殺か?
心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手掛りに
死の謎を追求する。しかし、第二の事件はさらに異常なものだった。
茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相とは!?
私はしばしばお茶会に招かれることがあります。
その度思い出されるのが、この作品です。
主人公と友人らはこの雪月花というお茶でのゲームによって、
殺人事件と出会い、そして事件解決へと向かいます。
お茶を立てている人を眺めていると「誰か殺されたりしないよな」と、
あるわけもない妄想をしてしまいます。礼儀と忍耐を強いられ、
隣以外とは顔を合わせることはなくシンと静まり返った茶室に
響くのは茶筅の音だけ。そこにあるのは「わび」と「さび」。
そして私の脳内で展開される事件。
この作品を理解する、と云うよりも、「雪月花」が何なのかを理解するのは
中々難しいです。そして入り組んだ人間関係も。
互いの腹を探り合いながらお茶を飲む。もしかしたら、
それが千利休の頃の茶湯本来の姿なのかもしれません。
(英文3年 佐藤洋子)
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