フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2006年度を振り返って2
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新たな在り方を模索した1年    日本文学科3年 吉澤小夏
 文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択された
ことによって、読書運動は以前よりも多くの活動を求められ、
今年度はそれをふまえて活動が始まった。その結果、読書会や
読み聞かせをなど、学生主体の活動も多く行い、講演会中心だった
これまでとは異なる、新たな読書運動の在り方を模索した1年となった。
学内外問わず聴くことができる、講演会が多く行えなかったことは残念だが、
その分伸ばした学内での活動は、今後の活動に活かしていけるだろう。
  「宮沢賢治〜イーハトーブの迷宮をぬけて」とテーマを掲げ、
童話だけでなく詩や楽曲もあり、深い思想の貫かれた宮沢賢治世界に、
1年間でどれだけ迫れるか、不安もあった。やはり一年では
まだまだ足りなかったというのが正直なところだが、
それでもよかったのではないかと思う。なぜなら、宮沢賢治の世界は
答えを出すものではないからだ。1年間、月に1回を目標に行ってきた読書会で、
私はもっとも強くそのことを感じた。
読書会は、お昼休みなど短い時間を使い、先生・学生・職員の作品に対する
考えをぶつけ合う機会である。4月の読書会では、賢治作品アンケートで
1位だった「注文の多い料理店」を読んだ。三田村雅子先生を囲み、
オープンカレッジの学生さんもご参加くださり、短い時間だったのが
嘘のように楽しい話ができた。読書会は「読書」の可能性をもっとも
身近に感じられる機会なのだと、その時気付かされた。
5月以降も、作品を変え読書会を行ったが、やはり新しい発見があった。
読書会は自分1人で読むのでは気付けないいくつもの窓を開かせてくれる
機会である。読書運動プロジェクトは、「読む」読書にこだわらず、
朗読会など「聴く」読書、体感する読書、様々な読書の体験を
提供していく運動だが、まずその根本にある「読む」ことの深さは、
こんなところで感じられるものだった。「読書」というものが、1人ひとり、
またその時その時で感じ方の異なる、「生き物」のようなものであること、
だからこそ幅広い年代の人々をつなぐものとなること、そしてそれゆえ、
生きた作品を求めた宮沢賢治世界は、答えを求められないということを
教えられたように思う。
7月には、女優の幸田弘子先生が『よだかの星』『無声慟哭』などの
朗読をしてくださった。体全体が震えるような感覚を私はこの時
はじめて味わった。今でも作品をよみがえらせ、生きたものとして
発信することを、読書の「聴く」という部分では教えてくれる。
後期には、幸田先生のお弟子さんである鈴木千秋先生の
「朗読のレッスン」という授業が開かれた。そしてその授業の
公開試験として朗読会を行わせていただき、賢治作品では
『セロ弾きのゴーシュ』を朗読した。朗読に興味のある学生が、
賢治の作品や読書運動にも関われる機会となった。
今年度、読書運動が主軸とする1つ「朗読」では、このふたつの
イベントがあり、どちらも今後につなげていけるものになった。
7月に行ったもう1つの取り組みとして、読み聞かせがあった。
大学近くのなえば保育園へ、読み聞かせの授業を履修している学生の方、
参加希望の方と学生メンバーで、絵本を何冊か読みに行った。
予想を上回る希望者に驚いたり、読み聞かせの楽しさを実感したり、
よい発見があり、逆に、練習不足や今後持続していく難しさ、課題もあった。
大学祭で谷先生ご提案の「おはなし音楽会」も読書運動の1部として
催されたが、これも大変好評で、こういった「読書」の在り方は、
現在もっとも必要とされているように実感した。大きな可能性のある
取り組みだけに、読書運動の1部とするには重く、今後は新たな
プロジェクトとしていくことになりそうである。
また、夏にはメンバーで花巻を訪ねた。奇抜ではあったが
「イーハトーブ」と銘打っている以上その地にも行きたいと、
私の希望を押し通して実行してしまった。
1日目には、宮沢賢治記念館で賢治について学び、
童話村で賢治世界を体感し、
イギリス海岸など賢治ゆかりの地をめぐり賢治の思想に思いを馳せた。
賢治の愛した温泉宿に泊まり、メンバーの交流を深めるとともに
イーハトーブの夜空を眺めて、2日目には岩手にいることを忘れるくらい
その世界にひたってしまっていた。最後は賢治の墓にお参りをし、
旅で本の世界を味わったあっという間の2日間だった。
大学祭ではそれを元にウォークラリーや写真展を行うなど、
活動の一環とすることができたのが何よりである。
毎年、最大のイベントとなる大学祭では、今年も図書館ウォークラリーと
講演会を行った。図書館ウォークラリーでは、合わせて活動報告もしており、
地域の方にも読書運動を知っていただく機会となっている。
講演会ではますむらひろし先生がおいでくださり、「読書」なのに
「マンガ」と固定観念を打ち破った講演会は好評をいただくことができた。
読書運動のおもしろさが詰まった2日間だった。
大学祭を境に活動が失速してしまうことが毎年難題だったのだが、
今年は大学祭後も朗読会や講演会、読書会をひきつづき行い、
1月にはラストイベントとして「風の又三郎・レクチャーと音楽」が行われた。
今年度の活動は、このラストイベントでの、平松先生による素晴らしい歌声で
幕を閉じた。毎年、音楽学部の方々とも共有できるイベントを増やしたいと
願っている中、こうした形で今年度の活動を終えることができ嬉しい。
1年間学生メンバー代表として過ごした私個人にとって、活動は本当に
多くのものを与えてくれたが、実のところもっとも大きな収穫は
、新メンバー6人である。代表らしからぬ私が、
なんとか今年度を乗り切れたのは、6人それぞれのもつ力に励まされてのことだ。
「読書」の広がる道は多岐にわたる。それを6人それぞれが持っている。
絵は読書とはまったく異なるものだが、それによって読書運動の宣伝は
支えられており、創作コンクールのポスターはじめ描いてくださった
加藤さんは、その面でも活躍してくれるだろう。
読書運動がはじまった当初から、朗読は活動の主軸だったが、
それを引き継いでくれるのは高橋さんである。ますむら先生講演会での
司会は好評だった。萩原さんは、学生メンバーのムードメーカーであり、
原稿や連絡事項をてきぱきとまとめてくれるお姉さん的存在だ。
読書会での司会進行などを務めてくれた。読書運動の今後もっとも
大きな課題は、運動を学生に浸透させることだが、尾藤さんのもつ
社交的な面はその助けとなるだろう。今後読書運動がどのように
広がっていくか、未知ではあるが、学校外とのリンク、
交流も彼女に引っ張っていってほしい。読書会でも日々の話し合いでも、
個性的な意見でメンバーを驚かせてくれる平石さんだが、
彼女は合唱の活動もしており、音楽と読書のコラボレーションでも
アイデアを出してくれそうである。今年度の創作コンクールでは
残念ながら戯曲の応募がなかったが、戯曲部門での優秀作を演劇部が
上演する、というアイデアもある。読書と演劇、「体感する」
読書運動において、演劇の活動をする宮川さんはこの一端を
担ってくれそうだ。それぞれがそれぞれのフィールドで、
今後とも活躍してくれることを願う。
最後になったが、今年度も温かく厳しくメンバーを支えてくださった
図書館の鈴木さん、読書運動産みの親であり、読書可能性を
もっとも信じる図書館長三田村雅子先生、至らない私を細かな
機転をきかせ陰で支えてくれたサブリーダーの佐々木さん、
学生メンバーのみんなに感謝したい。


新入生向けサークル紹介の様子
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