フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2006年度を振り返って8
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日本文学科1年  高橋さくら
私が読書運動プロジェクトに入ったのは、1つには活動の幅広さに
興味を持ったからである。普段は本を読んでも、その世界を楽しむだけで
読みっぱなしになってしまっていた。しかし、読書会で感想を話し合ったり、
物語の背景などを聞いたりすることによって、作品をまた異なった観点から
見ることができ、新たな魅力を発見することができた。
 少し遅れて入った私が初めて参加した読書会は、「セロ弾きのゴーシュ」と
「オツベルと象」をテーマにした回だった。何気ない感想や、先生からの
専門的なお話しなど、お昼休みでは語りつくせなかったことを
印象深く覚えている。
 また、6月に行われた幸田弘子さんの朗読公演会には、
学内外を問わず多くの方が来てくださり、新たに椅子を運び
入れなければならないほど盛況だった。椅子を運びながら、
内心は嬉しい悲鳴と、ゆっくり幸田さんの朗読を聞くことができない
残念さとに2分されていた。一段落し、教室の隅で聞いた幸田さんの声は、
決して大きな声ではなかったのだが、よく通り、頭の上でぼんやりと
想像していた宮沢賢治の世界が、目の前に広がるように感じた。
耳で聞く、声に出すことで、作品の世界がより鮮やかに確かなものとして
現れるということを気づかされたのである。
 11月には大学祭があった。読書運動プロジェクトは
図書館ウォークラリーを行うということで、数週間前から担当を決め、
準備が進められた。模造紙に文字を書く作業に苦戦したり、
景品を袋詰めにしたりと、時間はあっという間に過ぎていった。
慌しく迎えた当日は、お天気にも恵まれ、たくさんの方に楽しんでいただけた。
また、大学祭企画として開催した漫画家のますむらひろし氏の講演会では、
宮沢賢治の作品を漫画化するにあたっての苦心やこだわりなど、
大変貴重なお話しを聞くことができた。
 他にも、ナチス抵抗運動をした「白バラ」の展示会や、
それに連動した上映会など、私個人として避けがちなことに
触れることもできた。「本は心の栄養」とよくいうが、この1年で
出会った本も知識も経験も、すべてが私の栄養となった。
来年度は、「児童文学の現在〜大人と子ども・消えるボーダーライン〜」を
サブテーマに、児童文学を読んでいく。児童を対象に書かれた作品が、
なぜ多くの大人に支持されるのか。私たち学生ならではの読み方が
できるのではないだろうか。来年度も、新たな発見と経験ができることを
楽しみにしている。

大学祭企画「おはなし音楽会の様子」
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