フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2005年度文部科学省特色ある大学教育支援プログラム採択
 読書運動プロジェクトが活動を開始し、4年目となった今年
度、当プロジェクトは文部科学省の「特色ある大学教育支援プ
ログラム(特色GP)」に10倍以上の競争率をくぐりぬけて採択
された。「読書運動プロジェクト」は、シカゴ市で大きな成果
を上げた「一冊の本を読む」プロジェクトに触発されてスター
トした。早いもので2002年度より積み上げられてきたこの活動
の実績が、特色GPに採択されたことは本学学生教職員皆の大き
な喜びとなった。
 当活動の目的は、さまざまな角度から読書にアプローチし、
講演会をはじめとする諸企画によって読書に対する関心を高め、
活字離れをくいとめようとするものである。
 当初より学生メンバーを中心として、学生の企画提案につい
て教員が助言し、職員が事務的なバックアップをするという、
全学的な体制で運営してきたが、5年目という節目の年となるな
る来年度は、さらなる更なる拡充に向けて邁進していく。

・活動の目的

・学生の読解能力向上を目的とする。学生メンバーを中心に選
定された「一冊の本」を通して、読書への意欲を喚起し、全学
で興味と関心を共有し、さらなる読書の習慣作りを目指す。

・図書館、図書館運営委員会の教員、学生メンバーを中心に、
読書欲をどう刺激し、その楽しさをどう伝えるかを考え、企画、
実行する。

・学生提案の授業、関連する講演会・映画上映会・音楽の演奏
等により、読書への関心を呼び覚ますこと、さらに、朗読・作
曲・演奏によって、「本」から得たものを伝え、感動を分かち
あうという試みを地域にまで広げて、読書の喜びの共有をめざ
す。

・大学時代は読書習慣を身に付けるの最後の機会であるが、そ
れを形成すべく、さまざまな環境と刺激を用意し、あらゆる学
びの原点である、文章の読解力を高めることを目的とする。読
書の好きな学生に対しては、さらにその読みを深め、広げられ
るよう、読書会等で応援していく。

「本」を読むということは、多角的・多義的に「意味」を問い
直すことでもある。本学は「For Others」という言葉を建学
の精神としているが、他者との共生の大切さを理解するには、
読書を通じた「他者体験」が欠かせない。ゲームは一人称の立
場でしか発想できないが、読書は何人もの他者に成り代わるこ
とができる点に、大きな意味がある。これまでにも、読書会・
朗読会・講演会などを多数開催してきたが、平成18年度からは、
読書運動のカリキュラムを開設し、大学を挙げて、読書に真剣
に取り組む。大学の大きな催しも読書への動機付けと捉え、関
連する展示・読書感想文コンクールなどを開催する。また、お
勧め本の紹介、開き読みの会など、個々の読書体験を他者へ伝
達し、共有していくことの喜びが、更なる読書へのきっきっか
けとなるような活動にも取り組む。

・活動による成果

・広報活動によって得られる成果

 読書の危機の問題は、大学を超えて、社会全体の問題であり、
読書運動を学内外に広く周知し、理解と支援を求めていく。そ
れによって問題点が明確になる。また、運動を実施する学生・
教員・図書館員の意識革命にも繋がり自己の活動を振り返るこ
とができる。

・関連講演会によって得られる成果

 さまざまな角度から年間テーマを読み解く講演会を行い、多
岐にわたって読書の意味を問う場を設けることが、多角的思考
力を養う手助けとなる。

・読書会・朗読会開催によって得られる成果

 専門家の助言を仰ぎながら、自分の感動を伝えていく技術を
学ぶ。人前で朗読するために何度も読み返すことで、作品の読
みがどう変わるのか、聞いている人にどう伝わるのかを実感す
ることで、参加者は読書を共有することの楽しさに目覚めてい
く。

・レクチャーコンサート,作曲コンサート実施によって得られる
成果

 離れたキャンパスで学ぶ音楽学部生も、音楽というメディア
を通じて、読書の世界に遊ぶことの楽しさを味わい、読書に向
かう新たな視点を得ることができる。

・創作コンクール開催によって得られる成果

 本から得たものを発信していくことで、読書はより先鋭化し、
活性化する。コンクール入賞作を製本し本人に渡すとともに、図
書館の蔵書とすることで、学生はさらに創作への意欲を強くする。

・学内主要行事との連携によって得られる成果

学内の重要な行事(国際会議,創立記念講演会等)と連携し、読書
への動機となるような企画をすることで学生は刺激を受け、読書
運動への理解が深まる。

・アンケートから得られる効果

 1年の活動を振り返り、是正すべき点を考え、翌年のプロジェク
トに生かしていく。図書館活動と読書運動の円滑な結びつきを図る
ための資料とすることで、運動の空転を避けられる。その結果を、
同じような問題を抱え、読書に取り組もうとしている大学図書館、
地域の公共図書館、中学、高校の図書館に向けて発信すれば、読書
運動は学内のみでなく地域の活動としての広がっていく。

・効果測定

 入学時から毎年追跡調査を行い、本学の学生の読書生活、読書傾
向の変化を読書運動との関連において探っていく。

・Q & A

1)単位化しているか、必修か、何単位か?

  2006年度から関連授業を開講する。選択教養科目の1つで、各
2単位。「今年の一冊(通年)」「読書からの発信(半期)」「読
書とメディア(半期)」。

2)どこか1学部がメインか、音楽学部の教員、学生の関りは?

 全学的な取り組みだが、テーマによっては文学部系になりがち。
が、テーマを社会的な切り口で取り扱ったり、音楽と関連付けたり
して、常に全学的な関心をひきつけるよう努めている。音楽学部の
学生が主に活躍できるイベントとして、本を読んでイメージを作曲・
演奏する「作曲・演奏コンサート」を開催している。また朗読会は
声楽科の学生の参加率が高い。音楽学部教員によるレクチャーコン
サートも実施。

3)一冊の本とは?

 発足当初はテーマとして特定の図書を選び、文字通り「一冊の本」
としたが、その「一冊」自体に関心が持てないと、そこから発展的
な読書へ導くことが困難であることがわかった。そのため、中心と
なる図書は1冊選ぶが、それに限定せずにテーマに関する図書を幅
広く扱うこととした。読書欲を刺激し、読書の習慣を育てる最初の
1歩となる本というような意味で「一冊の本」をプロジェクトの名
称としている。
4)何が目標か?

 活字離れを解消し読書を習慣化させることにより、総合的読解力、
文章力を向上させ、他者理解、複雑な思考力、多元的価値観を身に
付け、さらには外に向かって発信できるようになること。

5)学生メンバーをどう集めるか、毎年何人くらい集まるか?

  有志。大体10名前後。

6)テーマはどう決めるか?

 プロジェクト内で何点か候補を出しておき、それを全学アンケー
トで決める。

7)教職員はどうかかわるか?

 学生が企画立案し、教員が内容的アドバイス、図書館職員が実務
的フォロー。

8)各イベントに対する学生の反応は?

 概ね良い。学生メンバー企画立案なので、一般学生との温度差が
あまりないようだ。
9)よく本が読まれるようになったか?

 プロジェクト開始の2002年以降、学生1人あたりの貸出し冊数が
約3.5冊も増えた。また、テーマとして取り上げた著者の本が貸し
出しランキング上位を占めている。

10)学生に文章力、読解力、思考力がついたか?

 数量では図りがたいが、文章力、読解力、思考力が伸びていれば
創作コンクールや感想文コンクールの応募点数、出来栄えともに向
上するであろうし、授業レポートにも反映するのではないか。

11)就職に何か良い影響があったか?

 まだ4年目なので見えてこない。が、思考力、文章力をつけること
は就職のみならず、その後の人生にも良い影響があると思われる。
また、読書運動を通じて朗読や開き読み(読み聞かせ)といった新
たな境地を開いた学生もおり、将来への選択肢を広げたとも言える。


画像は大学祭展示準備の様子
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