フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度を振り返って7
読書運動プロジェクトに参加して  日本文学科1年 柿沼友香
 大学に入学してから早一年、
あれよあれよと時間が過ぎていったように感じます。
元々本を読んだりするのが好きだから、
読書運動プロジェクトってなんかおもしろそうだから、
といった理由で参加させていただきました。
 今回「村上春樹『風の歌を聴け』〜等身大の自分を探す〜」
といったテーマで、村上春樹の作品を中心として活動していきました。
『風の歌を聴け』に描かれる時代風景について、
作中に登場する作者が創り出した架空の作家、
デレク・ハートフィールドのモデルとした実在の作家、
スコット・フィッツジェラルドについて、
『風の歌を聴け』やその他の村上作品の隠されたフロイト・コード
についての等の講演会、スコット・フィッツジェラルドの作品、
『華麗なるギャツビー』の上映会、学祭でのウォークラリーと朗読会、
「等身大の自分を探して」学生の皆さんとの読書会、
講師の方との座談会をしてきました。
全てに参加できたわけではありませんが、
一冊の作品で様々な角度から見ていけることに驚きを感じました。
そして、参加したイベント全てに共通することなのですが、
作品の考え方を深められて嬉しかったです。
 今回の一冊の本として、『風の歌を聴け』を始め読んでみた時、
「(話的に)難しい内容だな」、「この作品は何を(読者に)伝えたいのだろう」
というのが正直な感想でした。
それを何度か読んでいくうちに、最初読んでしっくりこなかったのは、
作品と自分が近すぎてピントが合わなかったのではないだろうか、
という気持ちが表れてきました。
顕微鏡で微生物や細胞を見る時に、
いちばん低い倍率のレンズを対象物に近づけてピントがずれるように、
この作品は最初に読んだ時、読者に、特に主人公と同世代の人に、
ピンぼけを生じさせているのではないだろうか、と感じました。
その反面、一世代以上離れた世代の方々には、
心の整理がついて昔を振り返って、
懐かしく思える作品なのではないだろうか、と思えました。
同じ物の見方、同じ角度とまで行かなくとも、
登場人物たちが感じることは
そのまま私たちが感じていることではないのだろうか、と思いました。
近すぎるが故に、この作品が難しく感じられるような気がしました。
 自分にとって「これ、面白そう」と思える本をきっかけにして、
学生の皆さんにもっと幅広く「読書」に興味を持って頂けたら嬉しいと思います。
そして、それを手助けできる仕事ができたら、なお嬉しいと思います。

「前田絢子先生 講演会」に集まった人たち
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