フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度を振り返って9
読書運動プロジェクトに携わって  日本文学科1年 佐々木かおる
 読書運動プロジェクトという団体は入学前から耳にしていた。
しかし、自分自身が所属することになるとは、
正直に言ってしまえば考えていなかった。
入学前の、憧れや幻想や希望だけで考えていた大学生活とは違い、
入学後は常に何かに追われているような感覚を覚えていた。
それは恐らく、自らに全ての責任が課せられているという現実からだろう。
その混乱や重圧にも慣れを感じていた頃、
読書運動プロジェクトに入ることに決まった。
そこからはとんとん拍子、流れるように企画に入り込んだ。
6月の学生主体の企画であったせいもあっただろう。
数々の障害、問題を越え、企画を成功させ、
大学祭も無事に行うことが出来た。
それらの達成感は、かつて感じていたものとは
異質のものであり、価値もまた異なるものであった。
 今年度の活動主軸は村上春樹であった。
読書運動プロジェクトに入るまでは、名前を知っていただけで、
読んだことがなかった作家である。大学祭で朗読をするため、
声に出して読むことになり、その時に、
村上春樹の言葉遊び言葉選びが読んでいて
面白いものであると気づいた。
声に出す、物を音読・朗読するということは
年齢が一桁の頃からしていることである。
その行為が、文章内容と密接に関わり、
一見不思議であり敬遠されがちなものであっても、
それによって新たな魅力になると今更になって気付いた。
蛇足的になるが、私は物事を作り出すことがあまり得意ではない。
団体、或いは組織の歯車の一つになることは容易く、得意である。
機械的、事務的に物事をこなしていくほど単純なものはない。
その中で応用性汎用性を見出していけばいいだけである。
一方、この読書運動プロジェクトは主体的に物事を考案し、
1年間の基盤であるテーマから全て決めねばならない。
読書を推進する団体に所属しておきながら、
中学高校時代に比べ本を読む機会が減った私にとって、
見識の広いこの団体では満足に発言できないこともある。
だが、他のメンバーたちと協力し、
物事を作り出していく作業は困難が故、
面白さが共存している。
今まで感じていた困難とはまた別のベクトルの困難である。
これは、恐らく生きていく上で必要且つ絶対なものなのであろう。
時期が早いのか遅いのか、私には判断しかねるが、
通るべき楽しさを今味わっているように思うのだ。
 村上春樹には1年間全て干渉することが出来なかった。
それにも関わらず、多くの発見があり、村上春樹という作家は、
様々な意味で忘れることが出来ない名前となった。
テーマ決めの企画から携わった来年度、
合計1年以上のスパンになるかもしれないが、
また新たな発見が多いことを期待している。

「実験体験型イベント 座談会」での様子
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