フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2007-1活動報告書・はじめに-2
2007・活動報告書-2 *この記事は1〜2まであります
文学部教授三田村雅子
これらの読書会活動と並行して朗読会、読み聞かせなど、授業と
の連関の中で活動を広げ、発表に繋げていく活動が活発に行われた。
例年にないこととしては、横浜市読書フェスティバルにフェリスの
学生四名が朗読で参加し、音楽学部の学生2名のバイオリンとピアノ
の間奏を得て、すばらしい発表を行えたということがある。朗読した
学生は、3名が読書運動プロジェクトのメンバーであり、もう1名は
立候補してくれた一般学生だった。何日も大学に残り特訓した甲斐
あって、片思いの少女の胸の痛みがそのまま感じられるような、
痛切にして、鮮烈な朗読となった。この横浜市読書フェスティバル
は例年、読み聞かせなどをするお母さんグループの発表がほとんど
で、バラエティに欠ける問題があったが、こうして若い学生さん
たちの参加を得て、新鮮な感動があったと主催団体からお褒めの
言葉を頂戴した。苦労した甲斐のあった発表会であり、学生たち
の朗読の実力が一気に上がったことが感じられる意義深い公演で
あった。

 文化祭には、これらスポーツ小説とは関係ないが、児童文学の
書き手として当代一の人気を誇る梨木香歩さんに講演をいただき、
本学で一番大きな講堂であるグリーンホール(368名収容)が満席と
なり、立ち見も出る盛況ぶりだった。質問も活発で、講演をする
ことの珍しい梨木さんの生の声を聞くことができた、貴重な機会と
なった。その後は図書館内でサイン会が行われ、何時間もお付き
合いいただくことになったが、来場者は大喜びだった。

 12月にはもう一つ大きなイベントである、読書シンポジウムが
行われた。「今、図書館に求められるもの〜コンピュータ時代の
図書館と本」というタイトルで松田哲夫(王様のブランチ本のコー
ナー司会・筑摩書房専務)、津野海太郎(元晶文社編集長、本と
コンピュータ編集長・和光大学教授)と私がそれぞれ報告し、質問
しあって、現在の図書館と本をめぐる風景の問題点を語り合う催し
を行った。ロビーには活動の実態を報告するパネル展示をし、学生が
説明役として、活動の報告を行った。

 さまざまな学会が重なった日でもあって、出席者はそれほど
多くなかったが充実のシンポジウムであった。かねて敬愛して
いたお二人のお人柄に触れ、それぞれの立場で本と図書館に
ついて語っていただいたこと、ありがたく受け止めている。
その経過についてはシンポジウム報告集に拠られたいが、
その席でわたしどもの大学の読書運動について、大学の
体力として、読書運動を支えられるかどうかという質問があった。
質問者は「大学の体力」ということで何を考えておられるのか
よくわからないが、有名大学や巨大大学でもないフェリスに
このような試みが本当にできるのかという意味の質問だと受け
止めた。フェリスは学生数2500人余りの小さな大学である。
しかし、巨大大学でないがゆえに、小回りの利く、学生の顔の
見える改革ができるということもある。フェリスの読書運動は
そうした大学の小ささを生かした改革であり、挑戦だという
ことができるのではないか。

 今年はさまざまな試みをし、特色GP3年目ということで、活動
実態報告や評価をいただく査察も迎えた。こうした「外部」からの
目をたくさんいただいたことで、私たちの試みの意義も役割も
(そしてもちろん欠点も)自覚することができた1年間ではないか
と思う。それはやはり大したことだったのだと率直に思う。

それにしても、たくさんの企画に出来る限り手を広げた1年だった。
さまざま意欲的な試みを支援し、実行に移してくれた学生さんたちと、
先生方、そして図書館の鈴木さん、中村さん、加藤さんに改めて
深い感謝を捧げます。
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