フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2007-2活動報告書・読書会-4
2007-2活動報告書・読書会-4 *この記事は1〜5まであります
第四回読書会『家守綺譚』を読む
大学祭での朗読会をお願いした梨木香歩先生が、事前に『家守
綺譚』を取り上げるとおっしゃっていたので、読書運動プロジェ
クトではその予習のための読書会を開きました。

この作品は、草木の名前を冠された短編集です。読書会では、
自由に感想や意見を述べていってもらいました。プロジェクト
メンバー以外の、外部の方も参加してくださり、私たち学生とは
違った目線での興味深いご意見を頂きました。

物語りの中では、河童や川獺などユニークな動物が絡んだり、
主人公に懸想した百日紅の話が人気のようでした。物語の鍵と
もいえる、主人公の友人(故人)の、独特の飄々とした雰囲気と
言葉の深さに、私は興味をそそられました。最後の話で、主人公が
神々に進められた食べ物を口にしなかったことに対しても、自分
ならばどうするか、と意見を出し合いました。誘惑に負けて食べて
しまう、という意見もでて、主人公の信念や、特別であることを
求めない自然で謙虚な心に感動しました。物語の舞台については
本編では詳しく述べられていませんが、人がまだ自然や不思議な
ものと共存していた時代、という設定に、読書会の参加者は皆、
憧れを抱いており、それがこの作品が親しまれる理由のように
思いました。

また、不思議なことも理解できないことも、そのまま受け入れる、
という主人公の姿勢が、知らない時代の物語なのに、なんだか
懐かしい感じにさせ、さらには私たちの憧れをかきたてるのだ
ろう」なとも思いました。

色々な意見が出ましたが、「短編集なので読みやすい」、
「小見出しが植物の名前になっていて、話がその植物に沿って
いるところがおもしろい」、「日ごろ私たちの身近にある植物が
多く親しみがある」、「はじめて聞く名前の植物もあり、どの
ようなものか想像しながら読んだ」、などの意見もありました。
自然が生き生きと美しく描かれていることも魅力です。雨や風の音、
色や光、空気や温度や雰囲気。そこに生き物がいて、生きている
ことを実感させるような生命力があり、けれどもあちらとこちら
の世界画互いに干渉し過ぎないおとなしさや静けさもあり、言葉や
リズムの美しさが目を引く作品だと感じます。

今までの梨木先生の作品にはあまりない、レトロな純和風ファン
タジーというところに惹かれましたが、作者が伝えたい主題を探る
のは、かなり難しかったです。

梨木先生の大ファンの外部学生さんが、他の作品の紹介や雑誌の
インタビュー記事などのお話もしてくださり、充実した読書会と
なりました。

                 感想・報告 日本文学部 1年 岡田奈々美
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