フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2007-7活動報告書・おわりに-2
2007-7活動報告書・おわりに-2 *この記事は1〜2まであります
附属図書館鈴木明子
 さっそく出し物を「朗読・演奏会」、作品を、あさのあつこの
『ランナー』より「薄雲の下で」と決め、メンバーをつのり
猛練習に入りました。読書運動関連授業の「朗読のレッスン」
の講師、鈴木千秋先生に指導を、音楽学部準教授、落合先生に
ご協力を仰ぎ、毎週月曜日の5限に練習を続けました。その甲斐
あって、発表は大変すばらしいものとなり、来場者の好評も得られ
ました。

読書運動は地味で、なかなか手ごたえの得られない活動です。
が、こうして外部にも認知されているということ、多くの来場者の
前で優れた発表ができたことは、参加したメンバーにとっても
大きな刺激になったのではないかと思います。

が、やはり学内で同じ発表会をしてみると、人はなかなか集まり
ません。たとえそれがどんな崇高な理念によって支えられていても、
おもしろくなければ人を集められず、また続かないのは自明の理
であり、また、たいへんなことでも、やりがいや手ごたえが感じ
られれば、やりとげられるのもたしかです。楽しいミッションと
やりがいのあるミッションと効果的なミッションは違うのだと、
つくづく感じました。その3つを上手く癒合させ、結果につながる
活動をするにはどうしたらいいか。ずっと考えているのに答えの
出ない問題を、さらに継続して考え続けなければならないことは、
思考の迷路に入り込むようで、苦しいことですが、考えることを
止めてしまったら、そこですべてが終わってしまいます。

来年度は安部公房の『壁』が課題図書です。死後10年以上経過し、
未だファンは多いといえども、現在流行中というわけでもなく、
かつまた非常に難解な作家を、今なぜ取り上げるのか。

「謎の世界に飛びこめば…」というテーマにこそ、私たちの気持が
現れています。難しく、わからないからこそわかりたい、本気で
文学に取り組んでみようというのが、今年度の反省を踏まえた上
での気構えでです。このテーマは、今年度以上に学生をひきつける
のが難しいかもしれません。が、安部公房は、本気で読めば、
好みの差はあれども、おもしろい作家であることは確かです。
それこそ、活動の成功の鍵は宣伝、広報のしかたにかってくる
でしょう。図書館では、貸し借りの際に、安部公房の魅力を伝える
しおりの発行や、スケジュールを記したチラシの配布を考えていますが、
図書館員や読書運動プロジェクトのメンバーのみならず、読書推進は
大学全体のミッションであるという、活動開始当初のありかたに
立ち返り、教職員全体の協力をお願いしたいと考えています。

難しく、面倒で、木を育てるように地道に活動するしかない読書運動。

が、自分達でイベントを企画し司会をし、自分達で文章を書いて
機関紙を発行するという、学生メンバー手作りのこの運動は、
参加した人の将来に、必ず役に立つと信じています。文部科学省の
特色ある大学教育支援事業の補助金交付期限は2008年度をもって
終了しますが、私たちの活動は続いていきます。

読書は計量できません。図書館の貸出冊数などで、一喜一憂する
ことはないと私は思っています。性急な答えを出したがらずに、
学生が大人になって大学時代を懐かしんだときに、読書運動を
思い出し、それがきっかけとなって本を読むようになるというのも、
読書の浸透にはちがいないと思うのです。斜陽と言われて久しい
本の未来に、すぐに答えが出せないように、読書もきっとそう
でしょう。ゆっくりがんばりましょう。あきらめて止めてしまう
のが、何より一番悪いことなのですから。
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