フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
02-6・『あやし〜怪〜』 居眠り心中
2003年4月28日発行『読書運動通信2』掲載記事6件中6件目
今年の一冊の本 2003 宮部みゆき
 題名だけでだいぶ遠ざけていた本だったが、面白かった。しかしやはり怖かった。
すごく怖いのではなくぞっとする怖さで、読み終わって背すじが寒くなった。
 「手拭い心中」の話にまずひきこまれ、物語柄の手拭いを使って
心中という設定が「心中」という話なのになんだか共感してしまい、
その死に方はきれいかもしれない、などと思ってしまった。
 そこから時代は下がって場面が変わり、どうつながっていくのか気になった。
同じように死ぬのだろうと思っていたが、そこまでがまた平穏な日々や
トラブルやで長く、登場人物が細かく描かれていてひきこまれた。
銀次という男が読者を引率している感じで、若旦那様の源氏のようなところや
おはるのあとにお夏と言う新・旧の設定、この昔話なだけだった
「手拭い心中」がまた起こる…とは書かれていないが夢の中のおはると若旦那、
その後の若旦那、色々なことが書かれているのに読みやすく、
するすると入っていくところが不思議だった。
 さりげない言い回しが素敵で背景描写との合わせ方などで場面が
浮かんでくるので読みやすいというのもあると思った。
 きっと本当にあっただろう、と思わせる感がまたすごい。
リアルで怖くて、少し悲しくて、銀次に感情移入もしてしまう。
なんだかすごかった。ドキドキした。死体が流れてくるところなど。
最後まで本当のことがわからないまま、というのが読み終えてからの
「ぞくっ」をさそうのだと思う。とても面白かった。
(日本文学科1年 鈴木真結)
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