フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
10-2・私の薦めるこの一冊
2003年10月20日発行『読書運動通信10号』掲載記事4件中2件目
自分と重ね合わせ自分を振り返る--『デッドエンドの思い出』よしもとばなな (文芸春秋)
 はじめに、この本は短編集です。馴染みやすくすらすらと読めるので、
勉強、サークル、アルバイトと、この時期何かと忙しく、読書の時間を
あまり持てない人にも非常にお薦めの一冊です。
 作品は、“幽霊の家”、“「おかあさーん」”、“あったかくなんかない”、
“ともちゃんの幸せ”、“デッドエンドの思い出”の5つの小説で、それぞれ、
ラブストーリーが繰り広げられます。ベストセラーにもなっていますが、
5つのお話どれをあげても、深く味わえ、共感できるものがあります。
全てのストーリーの主人公が女性であることもメリットで、自分と
重ね合わせてみたり、常に自分のライフスタイル、マインドポジションを
振り返りながら読み進めることができるのも魅力です。
“幽霊の家”は、エロチックな部分もあるので進んでお勧めできませんが。
 私がこの中で一番気に入っているのは、“デッドエンドの思い出”です。
よしもとばななも、あとがきの中で「これまで書いた自分の作品の中で、
いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。」
と書き下しています。作品を読んで私が強く感じたことは、
人との距離感についてです。ここに登場する西山君は、
気落ちしている主人公(=私)に適度な距離で接しています。
特別にアプローチしているわけではないけれど、彼は確実に大切な存在であり、
彼女の心の支えとなっているのです。
 私も大学生になり、以前より更にお付き合いの場が広がってきました。
しかし同時に、社会に出ると時間に自由が利かないということも感じるように
なりました。これから先、忙しくもなる中で、自分にとって一番大事なのは、
お互いを気遣い程よい距離で、長くお付き合いができる関係なのだということに
気づきました。『デッドエンドの思い出』ぜひ読んでみて下さい。
新たな発見があるはずです。
(日本文学科2年 中丸葉月)
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