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2006年12月22日発行読書運動通信39号掲載記事7件中3件目
特集:1.恋愛 2.大学祭報告
紹介:宮沢賢治の本〜第7回
お知らせ:イベント
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『ライオンハート』 恩田陸/著 新潮文庫
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所蔵無し 発注中
私が今回読んだ『ライオンハート』は今まで読んできた恋愛小説とは
少し違った感じの連作集でした。
大概の小説には挿絵など入っていないものですが、
この本は各章の最初に物語の内容に合った名画が配されています。
表紙の美しさと帯の紹介文、中の絵に引かれて読み始めた私ですが、
すぐに夢中になってしまいました。
一言で言うと、「輪廻」とか、「運命」といった言葉がぴったりの物語です。
主人公の男女は時空を越えて何度も何度もめぐり合います。
けして結ばれることはなく、ほんの一瞬の間しか一緒にいられない2人は、
次の邂逅を待ちわびています。
そんな2人の切ない気持ちが読むほどに伝わってきて、
涙をさそわれることもしばしばあります。
けれどもこの物語には不思議と悲壮感がありません。
それは、2人が深く愛し合っており、短い逢瀬を渇望はしていても、
このような運命の恋に少しも後悔を感じていないからだと思います。
別れの場面を読むと、私はいつも「出会えてよかったね、また会えるといいね」
と2人を応援したくなります。
この気持ちを前向きと言えるのかどうかはわかりませんが、
優しい気持ちに満たされることは確かです。
この物語は何度読んでも飽きることがありません。
章ごとに時間も場所も語り手となる人物も違うので、
全ての登場人物に共感することが可能です。
描写も美しく、また、なぜこの2人が「輪廻」を繰り返すのかという
ミステリーは最後の章を読むまで解明されません。
これまで恋愛小説が苦手だった方にもおススメの1冊です。
(日本文学科1年 白髪友美)
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