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2003年4月8日発行『読書運動通信1号』掲載記事4件中3件目
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新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
今回は新入生にお勧めしたい本ということで、私たち読書プロジェクトの
プロジェクト委員から宮沢賢治の作品を2冊ご紹介します。
宮沢賢治の童話は幼い頃に読んだことがあるという方も
多いのではないでしょうか。
童話の持つ力は大きく、その中に数多くのメッセージも隠されています。
今、宮沢賢治の作品を読むことで、今まで気づかなかった新たな発見も
たくさんあると思います。2作品とも短く手軽に読めるので、
ぜひ宮沢賢治の世界を堪能してみてください。
●蜘蛛となめくじと狸●
「蜘蛛と、銀色のなめくじとそれから顔を洗ったことのない狸とは
みんな立派な選手でした。けれども一体何の選手だったのか私はよく知りません。
山猫が申しましたが3人はそれはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。」
これは『蜘蛛となめくじと狸』という作品の冒頭の部分です。この作品は蜘蛛、
なめくじ、狸3匹の伝記という形で描かれています。蜘蛛の糸に虫たちを
引っ掛けて食べる蜘蛛と、優しい顔をして様々な口実と共に近付き
トカゲ達を溶かして食べてしまうなめくじ、そして念猫という呪文を
唱えさせているあいだにウサギ達を食べてしまう狸。彼らは手段こそ違いますが、
生き物を食い殺し、そして自分も死んでいきます。
「なるほどそうしてみると3人とも地獄行きのマラソン競争をしていたのです。」
こう締めくくられている『蜘蛛となめくじと狸』。
様々なことを考える一つのきっかけになるのではないでしょうか。
読後は言葉には表しがたい不思議な感覚に襲われます。
（日本文学科4年 �盒桐害據�
●どんぐりと山猫●
この作品は山猫から手紙を受け取った一郎が山猫に会いに行き、
どんぐりたちの裁判の判決を下すという内容です。もしかしたら、
小学校の教科書で見た人もいるかもしれませんが、大学に入ってから読む
賢治作品は違う読み方ができるのです。
「どんぐりと山猫」には様々な擬音語が含まれています。楽隊が行進する音を
「どってこどってこ」と表現するなんて、まず普通の人には想像もつきません。
そこがこの作品のおもしろさの1つなのです。擬音語だけをたどっていったら
さぞ綺麗な音楽ができるだろうと私自身は思っていたりします。
また、宮澤賢治の作品には山猫がたくさん登場しますが、
「どんぐりと山猫」程、とぼけた山猫はいないのではないでしょうか。
一見王のような存在である山猫ですが、招待客である一郎に
やりこめられている場面など、人間味（？）溢れる姿なのです。
浦島太郎が竜宮城に行くように、かねた一郎は山猫の城に招待されました。
浦島太郎はまた、亀を助けたそのお返しに行きました。では、かねた一郎は
山猫に何をしたのでしょうか。それは私たちで考えなければなりません。
このような妄想を始めると、宮澤賢治の作品は非常に魅力的に見えてくるのです。
山猫はほんの少しの時間で、あなたを賢治ワールドに連れていってくれます。
もしかしたら素敵なプレゼントも見つかるかもしれませんよ！
（日本文学科4年 合澤早希）
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