フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
2004年度20-2・特集 クリスマスにお勧めの一冊-1
2004年12月20日発行読書運動通信20号掲載記事3件中2件目
特集:クリスマスにお勧めの一冊
*この記事は1〜8まであります。
サンタクロースっているんでしょうか
★『サンタクロースっているんでしょうか』

クリスマスに読みたい本、と言われて、本当に迷った。
クリスマス。これだけで頭に浮かぶタイトルは数知れない。
レイモンド・ブリッグス『スノーマン』、ジル・バークレム『ひみつのかいだん』、
O・ヘンリー『賢者の贈り物』、三浦綾子『ひつじが丘』等、
皆感動的で美しい物語ばかりである。
全部にお勧め文を添えたい。
けれども一つしかあげられないといったら、
『サンタクロースっているんでしょうか?』をとりあげるしかないだろうと思う。
これはニューヨーク・サン新聞社の社説である。
朝刊の一面のニュースの下に、申し訳程度に載っているような社説の一つが
ここまで語り継がれる理由は、
サンタクロースを卒業した大人にしかわからないだろう。
私がはじめてこの本を手に取ったのは小学三年生の冬のことだった。
なぜこんな質問があるんだろうと思うくらいサンタクロースの存在を信じていた当時、
『サンタクロースっているんでしょうか?』というタイトルは、
見るだに不思議な感じがした。その上この本の内容も、不可解な言葉の連続で、
これはきっと大人用の本なんだと、子どもだった私は内容理解を諦めてしまった。
きれいな挿絵だけ記憶に残し、後の文章はすっかり忘れてしまっていたのである。
それから時は流れ、高校二年生のクリスマス前に、私はこの本と再会した。
友達のクリスマスプレゼントを探している時、改装版が平積みになっていたのを
本屋で見つけたのである。東逸子のサンタクロースが微笑んでいる。
見覚えのあるタイトルに素敵な挿絵、不思議な心地でページを繰ってみた。
10ページ目に差し掛かったとき、私は同じ本を二冊抱え、レジへ直行していた。
一つは友達、一つは自分へ。あげるだけじゃなくて、
自分の手元にも置いておかなくてはならない本だと思った。
子ども時代、世界のあらゆるものを受け止めるだけでよかったころ、
この本は自分の目には奇異に映った。
しかし、成長し、世界のあらゆるものを疑わずにいられなくなったとき、
この本はひとつの明るい真実を自分に提示してくれた。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚……。
これらの感覚は、実は不確かなものだ。
感じるからといって本当に「ある」と言えるだろうか。
一方で、人間には感じられない物や世界もあるということを、科学は証明していった。
超音波や赤外線が良い例である。サンタクロースと同次元で語られる問題では
ないかもしれないが、心が見えないからといって、貴方自身なんか
「いない」といわれたら、どうお思いになるだろう。
たった八歳で、タイトル通りの問いを投げかけた少女と、
みごとに説得力と夢を備えた答えを返した、サン紙の記者。
両者に感動せずにはいられない。
また、この本は無味乾燥な事実を淡々と映すだけが新聞の役割ではないことも、
私に教えてくれた。
私にはもう枕もとにもツリーの下にもプレゼントは来なくなったが、
クリスマスの朝はどこかにうれしいことが隠れていそうな気がしてならない。
もちろん、何もなかったといって別にがっかりもしないが、
ただこのわくわくした気分を感じるたびに「やっぱりサンタクロースはいる」
とひとりごちるのである。
そう信じることに何の問題があろう。サンタクロースの存在ばかりではなく、
あらゆる不確かな事に、言いがかりをつけたくなるとき、
この本は素直な心に戻してくれるお薬になること請け合いである。(櫛谷 仁美)

三浦)サンタクロースは私も子供の頃は信じて疑わない存在でした。
不確かなことはそこらじゅうにあふれていて、どうなんだろうと
思わずにはいられません。
素直になることって簡単なようですごく難しいですよね。
Copyright(c) 2000-2006, Ferris University Library. All Rights Reserved.