フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
32-7・私たちの《今》を読む
2006年5月31日発行読書運動通信32号掲載記事9件中7件目
特集:1・就職/2・書店のオススメの本
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『ジェニイ』 ポール・ギャリコ 著 新潮文庫
ある日、少年は交通事故にあいます。気を失った彼が次に目覚めたとき、
少年の姿は真っ白な猫に変わっていました。そして何も知らないばあやに、
家から追い出されてしまいます。猫になり、野良猫たちの世界に迷い込んだ彼は、
戸惑うばかりで、どうしていいのかわかりません。心は人間、姿は猫という、
そんな状況下で、彼はジェニイというメス猫に出会います。
ジェニイは猫の作法を少年に教え、優しく見守っていてくれます。
一緒に生活していく上で「僕」とジェニイはお互いの機転で数々の危機を回避していきますが、
そんな中、次第に2人の間には淡い恋心のようなものが芽生え始めます。
しかし、最後の大物との戦いの後「僕」は人間に戻ってしまうのです。
この話がただの夢だったのか、それとも現実に起ったことなのか、
どちらなのかは読む人の気持ちによって変わると思います。
私は、少年は間違いなくジェニイと一緒にいたと思っていますが、
現実的に考えたたら人が猫に変わるなんて、おとぎ話以外のなにものでもないでしょう。
しかし、「もしかしたら」と思わせるだけのものがここには描かれています。
作者であるポール・ギャリコ自身が大の猫好きだそうです。
そんな作者の気持ちが猫の行動や細かなしぐさの繊細な描写に表されており、
猫好きにとってはもちろん、そうでない人にとっても楽しいお話しです。
また、初めに読んだときとは違う視点に立って読んでみることによって、
「僕」やジェニイの気持ちを再度確認しなおし、新たな発見ができる作品です。
何度も読んでみてください。(日文2年 高松彩子)
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