フェリス女学院大学附属図書館読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」
34-2・特集:絵本・児童書-1
2006年7月31日発行読書運動通信34号掲載記事7件中2件目
特集:絵本・児童書
お知らせ:「読み聞かせ会」報告
紹介:宮沢賢治の本〜第2回
『ねこと友だち』
 伊東寛 著 徳間書店
   所蔵無し(横浜市立図書館 所蔵有り)

 この物語の主人公は、「ブータレ」と呼ばれている元野良猫です。無口な彼は
「おばさん」の飼い猫となった後も孤独に過ごしていましたが、ある月夜の晩、
彼の目が青緑色に光ったことをきっかけに、やはり「おばさん」に飼われている、
同じ色の鱗を持った熱帯魚の夫婦と友だちになります。あるとき、彼は魚の
「旦那さん」が水槽から飛び出して苦しんでいるのを発見します。助けようと
顔を近づけた瞬間、「ブータレ」は、あろうことか、友だちであるこの魚に食欲を
感じてしまったのです。悩んだ彼は魚のいない国に行こうと家を出ます。旅の中で
彼は生命と食物連鎖について考えます。そして「ブータレ」は自己の生命の
ありようを否定しない、けれども単純ではない結論を出して、魚の夫婦のいる
「おばさん」の家へと帰って行きます。
 何度読んでも、魚への友情のために「ブータレ」が取った行動は、私の胸を
キュンとさせ、思わず涙してしまいます。友だちっていいな、家族っていいな、
と素直に思わせてくれる一冊です。(N書店 I)
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