竹取物語

 

絵の順番は19・20・21・22で錯簡があり、物語の進行順からすれば、20・21・19・22となる。
 特に五人の求婚者者の難題失敗譚の部分が多く、石作りの皇子一場面、くらもちの皇子四場面、安部御主人の火鼠の皮衣では四場面、大伴御行の龍の首の玉の話が三場面、石上麻呂の燕の子安貝の話が二場面で、十四画面が求婚譚に費やされている。画面に男しか登場しない場面も多く、十一場面で、大伴の御行の物語、石上麻呂の物語はすべて男性のみである。月の都の人を迎え撃とうという23の場面、富士山登山の場面24など、特に後半に偏って男性中心場面がある。
 他の本のほとんどが持つかぐや姫昇天の段を持たず、富士山登山の場面で終わっていることはこの本の最大の特色で、かぐや姫の昇天への揺らぎ、この世への未練を形象化することはない。これらの特徴は物語を収束させていく論理が、女主人公の側にはなく、男性たちの側にあることを示しており、おそらく竹取絵の享受者もまた、女性というよりは、男性を予想している。
 登場人物は同じ色・同じ型を着ていることが多く、色彩が記号的に用いられ、人物の弁別を容易にしている。五人の求婚者はいずれも赤、竹取翁は朽ち葉色、脇役の視点人物は橙色、端役は寒色系の衣を身につける。特に注目されるのは、橙色の衣の女房・男童がそれぞれ視点人物、語り伝える媒介者として描かれる場面が多いことで、具体的な脇役のまなざしに捉えられた物語が語られるという性格を表している。
 この竹取絵本では普通金雲で表される画面の縁取り・フレームがすべて青で施されており、竹取の翁の家の花も青、満月も青みがかって描かれ、月の下に青い線が描き込まれている。特に注目すべきなのは、海の色の青さである。大きなスペースでくっきりとした群青に塗りつぶされている。また、大量の黄金と引き換えに海の彼方からもたらされた火鼠の皮衣も、群青の布のかたちで示される。蓬莱山・富士山の描写も、青い山として描かれる。これらの青い空、霞、海、花、月、布、そして青い山には、はるかな他界への憧れが込められており、群青に託して、全体を通してそれを描こうとする姿勢が感じられる。
 特に最後に描かれた富士山図はとりわけ精細であり、また意欲的であって、黒煙を吹き上げているようすは、他の富士山図と大きく異なり、異彩を放っている。おそらくこれは、宝永四年の富士山大噴火の絵画化と思われ、この竹取物語絵本それ自体の成立年代も示唆するものであろう。
 作中、肌脱ぎ姿の「足軽」たち、及び鷹飼・犬飼などが多く描かれ、下層民への関心が特に深く感じられる。これらの傾向は本の製作者・享受者の性格と位相を示すものと考えられる。

 

(詳しくはフェリス女学院大学文学部紀要41号所載の三田村雅子・新生優希

 「新出資料フェリス女学院大学蔵「竹取物語絵本紹介」を御覧ください」)

 


上段―竹取の翁竹を取る。下段―竹の中で発見した子を家に連れ帰り、籠の中に入れて養う。

 


やや大きくなったかぐや姫をめぐって求婚者が登場、垣間見をする。

 


求婚者五人、かぐや姫を望んで竹取翁を伏し拝む。

 


求婚者五人、音楽を遊ぶ。

 


石作の皇子仏の御石の鉢と称するものをかぐや姫に贈る。

 


くらもちの皇子、供の者を連れて、旅姿のまま訪れ、蓬莱の玉の枝を翁に渡す。

 


くらもちの皇子が、蓬莱の島で仙女に会ったところ。

 


工人たち「蓬莱の玉の枝」製作の賃金不払いをかぐや姫に訴える。

 


竹取の翁、「玉の枝」をくらもちの皇子に返す。

 

10
阿部の御主人、小野房守を使に唐の商人「王けい」に砂金を贈り、火鼠の皮衣を探索を頼む。「王けい」返事を書く。

 

11
竹取の翁、阿部の御主人を部屋に導く。

 

12
阿部の御主人、火鼠の皮衣をかぐや姫の元に持参。

 

13
火鼠の皮衣を火にくべる。

 

14
大伴御行、配下の者に龍の首の玉探索を命ずる。

 

15
成果が上がらないのに苛立って、大伴御行自身がお忍びで舟に乗って探そうとする。

 

16
嵐に巻き込まれて這う這うの態で明石の浜に漂着し、かぐや姫の悪口を言う大伴御行。

 

17
石上麻呂が自ら籠に乗って、燕の子安貝を取ろうとするところ。

 

18
転落して、腰を折り、瀕死の状況にあった石上麻呂にかぐや姫からの見舞いの手紙があり、やっとのことで返事する。

 

19
(実は21)かぐや姫、月を見て、嘆き悲しみ、翁・おうなも共に悲しむ。

 

20
(実は19)帝、かぐや姫の評判を聞き、翁の家に狩の行幸をし、かぐや姫を連れ帰ろうとする。

 

21
(実は20)かぐや姫に拒絶された帝が失意の中、帰京する場面。

 

22
かぐや姫、月への帰還が近いことを知り、嘆き悲しみ、翁・おうなと共に涙する。

 

23
帝の命令で、かぐや姫の月への帰還を阻む兵たちが派遣され、翁の家の屋根、塀・門の上で警護する。

 

24
帝の命令で、かぐや姫の残した手紙と不死の薬を焼くために兵が大勢派遣され、富士山を登っている。