
フェリス女学院大学図書館では2004年度に絵入り竹取物語写本三冊を貴重書として購入しました。紺地金襴表紙のこの竹取物語は、二十四枚の極彩色の絵を伴っており、これは、竹取物語の絵入本としてはもっとも多い絵を含む新出写本であり、しかもその絵には際立った個性が認められます。
フェリス本は縦二十四センチ、横17センチ、上・中・下三冊本で、上巻の墨付き四十六丁、絵十一枚、中巻墨付き三十二丁、絵七枚、下巻墨付き三十九丁、絵六枚です。料紙は斐紙。見返しには金の切箔が散らされています。一行十六・七字、十行程度です。絵の前の本文は散らし書きされるのが通例で、絵の場面に合わせて、本文が書かれています。筆跡は手馴れた達筆です。
一般に絵入竹取物語は十枚から十五・六枚の絵を入れることが多く、本文を持たない絵だけの竹取物語絵に、三十枚を持つものもありますが、これを例外とすれば、二十四枚の絵を持つフェリス本は、本文と絵の両方を含む本としては、もっとも、絵の数が多いといえます。現存場面では他に類例のない場面、五人の求婚者がかぐや姫に求婚して、竹取翁に臥し拝む場面、くらもちの皇子の蓬莱山での女性(うかんるり)との出会いを語る作り話の場面、中国の商人「王けい」が火鼠の皮衣を砂金で売りつける場面を含んでいます。
三田村雅子 新生優希
1
上段―竹取の翁竹を取る。下段―竹の中で発見した子を家に連れ帰り、籠の中に入れて養う。
2
やや大きくなったかぐや姫をめぐって求婚者が登場、垣間見をする。
3
求婚者五人、かぐや姫を望んで竹取翁を伏し拝む。
4
求婚者五人、音楽を遊ぶ。
5
石作の皇子仏の御石の鉢と称するものをかぐや姫に贈る。
6
くらもちの皇子、供の者を連れて、旅姿のまま訪れ、蓬莱の玉の枝を翁に渡す。
7
くらもちの皇子が、蓬莱の島で仙女に会ったところ。
8
工人たち「蓬莱の玉の枝」製作の賃金不払いをかぐや姫に訴える。
9
竹取の翁、「玉の枝」をくらもちの皇子に返す。
10
阿部の御主人、小野房守を使に唐の商人「王けい」に砂金を贈り、火鼠の皮衣を探索を頼む。「王けい」返事を書く。
11
竹取の翁、阿部の御主人を部屋に導く。
12
阿部の御主人、火鼠の皮衣をかぐや姫の元に持参。
13
火鼠の皮衣を火にくべる。
14
大伴御行、配下の者に龍の首の玉探索を命ずる。
15
成果が上がらないのに苛立って、大伴御行自身がお忍びで舟に乗って探そうとする。
16
嵐に巻き込まれて這う這うの態で明石の浜に漂着し、かぐや姫の悪口を言う大伴御行。
17
石上麻呂が自ら籠に乗って、燕の子安貝を取ろうとするところ。
18
転落して、腰を折り、瀕死の状況にあった石上麻呂にかぐや姫からの見舞いの手紙があり、やっとのことで返事する。
19
(実は21)かぐや姫、月を見て、嘆き悲しみ、翁・おうなも共に悲しむ。
20
(実は19)帝、かぐや姫の評判を聞き、翁の家に狩の行幸をし、かぐや姫を連れ帰ろうとする。
21
(実は20)かぐや姫に拒絶された帝が失意の中、帰京する場面。
22
かぐや姫、月への帰還が近いことを知り、嘆き悲しみ、翁・おうなと共に涙する。
23
帝の命令で、かぐや姫の月への帰還を阻む兵たちが派遣され、翁の家の屋根、塀・門の上で警護する。
24
帝の命令で、かぐや姫の残した手紙と不死の薬を焼くために兵が大勢派遣され、富士山を登っている。
